PR

10カ月経っても翻訳原稿が来ない

 2004年8月、米国の出版社であるProductivity Press社(以下、PP社)から翻訳出版のオファーがあった。ダイヤモンド社の担当者が「PP社の編集長が別件で日本に来るから会いませんか」と言うので、夜行バスで出向いた。PP社の女性編集長は、「12カ月以内に翻訳出版する」と言ったため、ダイヤモンド社の担当者が「そんなにかかるの? 貴社はJIT(Just in Time)の本も出しているのに…」と返答したら、女性編集長は顔を赤らめたが、「我が社はトヨタ自動車ではないのでそれが実力だ」と言った。

 翻訳は、日本語本の翻訳経験が豊富な英語ネイティブをPP社が用意するという。日本語本の翻訳は米国人が読むにはあまりにもひどいことが多いと聞いていたので、ネイティブによる翻訳はありがたかった。しかし、私の本は二宮尊徳や豊田佐吉をはじめ、明治時代の文化や言葉が出てくるので、英語に翻訳した原稿を日本人の目で確認・修正したい。そこで、同じ団地に住んでいる、マツダで長年通訳を務めて既にリタイアしていた先輩にその仕事をお願いする体制を敷いた。

 ところが、待てど暮らせど英語の翻訳原稿が送られてこない。ダイヤモンド社が催促しても“なしのつぶて”だという。太平洋を飛んで殴りに行きたかったがそうもいかず、「どうしてやろうか」と考えあぐねていたら、10カ月目の2005年6月にPP社が「これから始めます」と言ってきた。私は、ダイヤモンド社の担当者に「『契約書通り、あと2カ月で出版せよ。さもなければ契約違反で訴える』と伝えてくれ」と言ったら、担当者は「本気ですか?」と聞いてきたので、「本気だ」と言った。