米国の有識者が相次いで絶賛
それからのPP社のスピードは見違えるようだった。米Ford Motor社(以下、フォード)と付き合った経験からもいえるが、彼らはやればできるのに、基本的に“大陸型人間”で、火が付くまでは仕事をしない。彼らと付き合うには、初めにどうやって火を付けるか考えておかねばならない。こうして2005年11月に英語版『Inside the Mind of Toyota: Management Principles for Enduring Growth』が出版された。約束の12カ月は過ぎていたが、もちろん「訴える」は脅し文句で、訴えはしなかった。
出版に当たって、PP社は米University of Michigan(ミシガン大学)のJeffrey Liker(ジェフリー・ライカー)教授に2ページの序文を書いてもらった。その一部を紹介する。「『The Toyota Way』(ライカー教授の著作、日本語版は『ザ・トヨタウェイ』)が散文90%、事実と図表が10%から成り立っているとすると、日野の著作は事実と図表が60%から成っているといえる。図表の多くのものは、私自身がこれまで見たこともない。20年間トヨタ自動車を訪問し、研究してきたのにもかかわらず、である。この図表は、私の知識の穴になっている部分を埋める手助けをしてくれた。私にとって、本書は再三再四読むことになる書物であり、具体的な事実および深い分析を参照することになりそうだ。トヨタ自動車の成功を理解するためには、底辺に流れるマネジメント原理と風土を深く探求しなければならない。詳細なる分析や事実に基づく説明を与えてくれる事実、数字、チャート、グラフが必要なら、日野の著作は必ず当たらなければならない1冊である」。
「Amazon.co.jp」の『トヨタ経営システムの研究 永続的成長の原理』のページには以下の書評がある。「この著作の特徴は、著者の蓄積情報からの具体的な内部プロセスやトヨタ幹部の発言、という事実にトヨタを語らせようとしている点にあると思われた」。ライカー教授も同様の書評をしており、「我が意を得たり」と思った。
米国での本の反響をインターネットで調べたら、どこかの書評で「これほど読みやすい日本の本は初めてだ」と言ってくれたり、『The Machine That Changed the World』(日本語版は『リーン生産方式が、世界の自動車産業をこう変える。』)で有名なJames Womack(ジェームズ・ウォマック)氏がどこかのサイトで「Outstanding Book」と言ってくれたり、SAE Internationalの人が褒めてくれたりした。米国の製造業分野のコンサルタントが交流したいと言ってきたので、米国で仕事ができるかもしれないと思ったが、大学教授との両立は難しいと思い、自然消滅にした(本音では、英語でのやり取りがつらかった)。