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 世界で初めて量産型の燃料電池車(FCV)を発売したトヨタ自動車は、FCVを「究極のエコカー」(同社代表取締役副社長の加藤光久氏)と断言する。トヨタのFCVに対する力の入れようは突出しており、2015年1月にはFCVに関連する特許約5680件の実施権を無償提供すると発表した。FCVのメリットは何か? ライバルの電気自動車(EV)を凌駕できるのか? 「MIRAI」の開発責任者の田中義和氏に聞いた。

燃料は多様化へ、電気と水素に注目

――MIRAIの価格は、補助金を考慮すると520万円前後。「クラウン」並みの価格です。安いとは言えませんが、10年前にFCVは1台1億円と言われていたことを考えると大幅なコスト削減が進みました。一方で、EVの商品化も活発です。EVに比べ、FCVはどこが優位なのでしょうか。

田中義和氏
たなか・よしかず:トヨタ自動車製品企画本部ZF主査(燃料電池車「MIRAI」の開発責任者)

田中氏 まず、基本的な考え方を説明させてください。現在までクルマの進化を引っ張ってきたのはガソリンを燃料にした内燃機関です。しかし、ガソリンなどの化石燃料への依存度は、いずれ下げなければいけません。埋蔵量に限界があるからです。地球温暖化への対応も大切になります。それが20年後なのか100年後なのかは分かりません。しかし、我々は、準備しておく必要がある。これが基本です。

 化石燃料への依存度を下げる過程で起こることは、燃料の多様化です。そう考えると、多様な1次エネルギーから造れ、しかも使い勝手が良いエネルギーが必要になる。有力候補は電気と水素です。加えて、電気や水素を燃料にするクルマは、走行時に窒素酸化物や二酸化炭素(CO2)を排出しません。いかにして環境負荷の少ない電気や水素を造るかという課題はありますが、走行時のCO2がゼロというのは大きな魅力です。

 ですから、我々はEVを否定するつもりは全くありません。特に近距離のコミューターとして使うには最適だと思います。明日使う電気を夜寝ている間に家で充電できますから。電気は家まで来ているので、こうした使い方ならインフラの問題もありません。

――EVは航続距離に課題があるということでしょうか。

田中氏 確かに航続距離を伸ばそうとすると、膨大な量の電池を積む必要があります。

――そうすると、コストが高くなり車両重量は重くなってしまいます。

田中氏 そうです。現時点では、航続距離に制限があると思います。では、どれくらい電池の性能向上が見込めるでしょうか。トヨタ自動車も電池研究部という組織をつくって全固体電池などの研究を進めていますが、いきなりEVの航続距離の問題を解決できるとまではいえません。