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──品質の良さをどう伝えることにしたのか。

倉田 「クラタペッパーのコショウが世界一」という評判をとにかく確立することにした。そうすれば、カンボジアのコショウ全体の評判も上がるという理屈だ。例えば、「イタリア製の靴」と聞くと、有名ブランドの商品ではなくても品質が良く思えるのと同じである。

 そこで、日本での営業はいったん諦め、ターゲットをカンボジアに滞在している外国人に切り替えた。当時のカンボジアには、復興のために国際連合や日本の国際協力機構(JICA)などさまざまな機関から外国人が来ていた。社会的地位の高い人々に商品の品質を認めてもらえば、口コミであっという間に評判が広がるだろうと考えたのだ。

 もともと、カンボジアにも外国人が帰国する時にお土産として買うような特産品があればいいと思っていた。そこで、コショウを特産品にしようという結論に至ったわけである。

自社農園でコショウを作っている(写真:クラタペッパー)
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──その戦略は成功したのか。

倉田 幸いなことに駐在している外国人のほとんどが、復興支援のために来ているので、カンボジアへの思い入れも強い。自国に持って帰って、どんどん宣伝してくれるようになった。当時20歳代の私が営業するよりも、社会的地位のある人が「いいね」と言ってくれた方が、影響力が大きい。世界中から人が集まるカンボジアという国の特徴を生かした営業のやり方を確立できた。

 復興が一段落した後は国連などから派遣されてくる人は減ったが、アンコールワットをはじめとする観光資源が豊富なこともあり、カンボジアを訪れる外国人は依然として多い。お土産としてコショウを持ち帰ってもらい、口コミで広がるというモデルは現在も続いている。その結果、世界各国からクラタペッパーのコショウを扱いたいという要望を受けている。

 カンボジアのコショウが再び世界で評価されたことで、クラタペッパーの他にも多くの企業がコショウを生産するようになった。カンボジアは現在、世界第7位の生産国である。内戦直後は20位よりも下で、全生産国の中では最下位に近かった。