承前

 2006年4月に韓国Samsung Electronics社(以下、サムスン電子)でのコンサルティングは終了したが、入れ替わるように同年3月にSamsung SDI社(以下、サムスンSDI)で8カ月のコンサルティングが始まった。そのいきさつは、サムスンSDIの開発課長が「上司の開発チーム長がなかなか常務に昇格できないので、何かでポイントを稼ぎたい」とサムスン電子に相談したところ、モジュラーデザイン(MD)を紹介されたとのことだった。動機が不純だなと思ったが、8カ月だけということで引き受けた。

 サムスンSDIのコンサルティングでは、プラズマテレビモジュール、モバイル機器向け液晶モジュール、モバイル機器向けリチウムイオン二次電池、ブラウン管テレビの4製品を対象とした。ブラウン管テレビは意外だったが、新興国向けには依然として需要があり、世界の電機メーカーが撤退していたので、当時のサムスンSDIでは高収益事業だったという。それから約10年が経った現在、同社はプラズマテレビとブラウン管テレビから撤退したが、リチウムイオン二次電池では消費者向けの小型製品を中心に世界トップシェアを占めており、自動車用バッテリーなど産業向け製品への進出を図っている。

 プラズマテレビとモバイル機器向け液晶モジュールはサムスン電子で経験済みだったので順調に進むと思ったら、サムスンSDIでは全社的に他のコンサルティングが始まっており、すべての設計者はそちらに時間が取られ、MDへの取り組みが進まなかった。サムスンSDIで進んでいたコンサルティングとは、「上流CPC(Collaborate Product Commerce)」と呼ばれるものだった。

上流CPCシステム(筆者の著書『実践 モジュラーデザイン 改訂版』p.176)
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 CPCとは、図に示したように、製品企画/メカ設計/エレキ設計/ソフト設計/生産技術など製品開発の関係組織間で、インプット情報とアウトプット情報についてマイルストーンごとに仕様情報を授受する流れを規定する“開発手続き”システムである。サムスンSDIの設計者は、このシステムを完成させるために、製品開発プロセスで発生するすべての仕様情報をリストアップし、インプット先とアウトプット先を明確にする作業に追われていた。

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