山本 「聞いた話の内容から連想して、自分なりの回答を繰り出す」という、同じテーマの枠内で互いの話が通じていると思ったうえで成立しているのが会話です。だとすれば、レベルは多少下がれども、「Siriのように相手が言ったことに回答を適当に返しても会話が成立している」ということであれば、「人間同士のコミュニケーションって何だったんだ」という話に立ち入っていかざるを得ない。
川口 ソフトウエアで起きている、そういうボトムアップで自己組織的な取り組みは、先ほど話したハードウエアのセルフアライメントの世界に近いよね。
今井 これからはロボットなども、ボトムアップで自己組織的につくっていくことになるんでしょうか。
川口 ハイブリッドになっていくんでしょうね。「どちらの方向に進んでいくかよく分からないけれど、何となく形が見えてきそうだ」という段階では、とりあえず「ハイブリッド」が最強なんですよ。自動車がそうですよね。これからの主役がエンジンか電気かはよく分からない。発電手段だって、当面の主役は「コンバインドサイクル」の火力発電です。SOFC(固体酸化物型燃料電池)まで組み込んだトリプルコンバインドなんてのまである。もちろん、核融合ができてしまったら話はガラリと変わるけれど、とりあえずはモーターとエンジンを混載して、いいところ取りをしてしのいでおきましょうと。
山本 そうですね。
川口 でしょう? だから、今は、いろいろな分野がひたすらハイブリッドなんだよね。しばらく境界領域では互いの領域がストレッチし合いながら、無理矢理ハイブリッドをつくっていく。それをやっていると、いずれ何か出てくるんじゃないかな。