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 あなたが活躍したおかげで商品やサービスが世の中に出て、みんなが感謝して喜んで使っている。そんな未来を夢見たことはあるか。恐らく、多くの技術者は「ある」と答えるに違いない。だが、そう思ったのは、いつのことだろう。今もそれを継続できているだろうか。
 今後10年超にわたるICT(情報通信技術)やエレクトロニクス業界の長期トレンドを予測したレポート『メガトレンド2015-2024 ICT・エレクトロニクス編』(日経BP社)の著者である川口盛之助氏と山本一郎氏が、これから拡大する市場や、企業・技術者の在り方を語り合う対談の第5回。今回は、2人の奇才が技術者の生き方、哲学に迫る。

(司会は、今井拓司=日経エレクトロニクス編集長)

今井 前回、日本の技術者の「好奇心の少なさ」や、「甘えの構造」という話が出ました。それは、日本に特有のことなんでしょうか。

山本 僕は結構、ロシアに行くんですけど、技術者に「前は何をやっていたの?」と聞くと「ミサイル工学をやってました」というような人たちがたくさんいるんです。

川口 いるだろうね。あの国には。

山本 その人たちが、ゲームソフトをつくっていたり、仮想現実(VR)の開発をしていたりするんですけど、どのようにして自分が興味を持つ領域を拡張できるかということをすごく考えています。

川口 日本の技術者は、自分の専門分野以外の話が苦手な印象が強いですよね。

山本 耳かきのように棒を突っ込んで引っ掻き出さないとなかなか話が出てこないですよ。「あなたの学問領域のことはよく分かった。それで、なぜそれに興味を持ったの?」というように掘り出していくと、嬉々として話し出す印象ですね。

 コンテンツ配信の暗号化技術の専門家が行き詰っているというので話を聞くと確かに袋小路になってるんですが、背広脱いで酒飲んでよく話を聞いてみると実は子供のころは絵を描いたり万華鏡覗くのが好きで、学生時代にフラクタル幾何模様に魅入られて数学の道に入って暗号の研究に没頭した、なんて回顧を喜んでされます。じゃあ、いま取り組んでいる技術で、そういう図形や立体で楽しいと思えるものを探してみたらどうですか、という話をすると「いままでそういうアドバイスをしてくれる上司も同僚もいなかった」とやたら感謝されます。興味や好奇心の本質ってそういうもんだと思うんですよ。

投資家/ブロガー/経済ジャーナリストの山本一郎氏(左)、盛之助 代表取締役社長の川口盛之助氏(右)(写真:加藤 康)
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今井 それは、実はみんながいろいろな興味や好奇心を持っていて、それをうまいこと掘り出せていないということでしょうか。

山本 持っていますね。興味の幅が狭いのか、話す機会がないのかという議論はあるかもしれませんけど。話し始めるフックが分かるまでに時間がかかるんですよね。

今井 奥底に眠っている状態になっている。

山本 そうですね。でも、大体のトリガーというのは「なぜ、その道に入ったのか」「ほかの可能性を捨てた理由は何か」に凝縮されていると思います。

川口 そういう部分はあるけれど、例えば、世界情勢の話を米国の技術者と日本の技術者にそれぞれ聞いたときの平均値を見たら、日本の技術者はどこまで語れるんだろうというところはあります。

 だけど、この情報の嵐の中で自分の価値観や意見をもつためには、世界観がしっかりしていないといけませんよね。「ほかの分野のことだから、私はよく知りません」というのはちょっとずるい。それを謙遜というプロトコルで巧妙にオブラートするところがさらにずるい。