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写真●東京大学 大学院理学系研究科の中村栄一教授

2013年に始動した、文部科学省と科学技術振興機構(JST)主導の「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」(関連記事)。三本の矢のうち、先端技術開発による「創薬プロセスイノベーション」の研究を進めるのが、有機化学分野において卓越した業績を上げ、2009年には紫綬褒章も受賞した、東京大学 大学院理学系研究科 教授の中村栄一氏(写真)だ。同氏にCOIプロジェクトの内容と目指すべきところを聞いた。

――今回の東京大学COI研究開発戦略の中での中村先生のミッションを教えてください。

中村 「自分で守る健康社会」プロジェクトの三つのグループの中では、「創薬プロセスイノベーション」を担っています。私たちの研究室では、有機合成化学による“ものづくり”を基盤に、有機化学を開拓しています。そうした中で2010年から開発を始めたカーボンナノチューブを用いた研究では、有機化合物の結晶化プロセスの基本原理を解明しました。

 COIではこの基礎科学的成果を基盤医薬品(ジェネリック医薬品)製造のための斬新な技術に結びつけることで、基盤医薬品ビジネスの改革につなげたいと考えています。外国産に代えて「ジャパンスタンダード」の高品質の薬を低廉な価格で国内外の患者さんに届けようとするものです。

 現在販売されている薬も20年も経てばすべて特許が切れ、いわゆるジェネリック医薬品になります。しかし、現在でも効果が確認され、多くの人が使っているこうした薬が沢山あります。アスピリンが好例ですね。我々は「ジェネリック医薬品」というより、むしろ「基盤医薬」として捉え、研究開発することに興味を持ちました。

 ジェネリック医薬品メーカーはいわゆる「パイプライン」に沢山の開発品を持っていますから、我々の新技術を試してみる素材を沢山持っています。大学で研究しているだけでは、折角の我々の最新科学・技術も絵に描いた餅です。東和薬品と密接に研究を進めることで、新技術の用途が初めて分かってきました。

 私の研究に対するスタンスは、「Scientist should provide dreams for people, and solutions for social problems.(科学者は人々に夢を与え、社会問題に答えを与えるべきである)」であり、20年来講演の度にそれを最初にお話ししてきました。今回の研究も、まさにこのスタンスに立ったものです。我々の興味はサイエンスにありますが、製薬メーカーと組むことで出口につながるわけです。