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 再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)に転機が訪れる。2015年3月末から、主に企業が持つ出力10キロワット(kW)以上の太陽光発電による電気の買い取り価格がキロワット時あたり32円から29円へ、7月からはさらに27円へと減額されるからだ。

 日本のFITは太陽光発電を中心に展開されてきたが、2015年度の買い取り価格の水準では、設備投資をその買い取り価格に見合った低コストに抑えない限り、投資事業として成り立たなくなるという見方が多い。

 一方で、縮小する大規模太陽光発電所(メガソーラー)市場の受け皿として、洋上風力発電が「風況」の良い地域で徐々に立ち上がり始めた。発電から電力小売りまでのサプライチェーンを下ると、2016年4月の電力全面自由化による新市場を狙って新電力の新規事業参入も目立つ。「ポスト太陽光」となる事業を探すエネルギー事業者の模索が始まった。

洋上風力の新規プロジェクトが本格始動

 風力発電のカテゴリーでは、20キロワット未満の陸上、20キロワット以上の陸上、2014年度から新設された洋上風力発電の3つが設定されている。FITでの買い取り価格は、それぞれキロワット時あたり55円、22円、36円(税抜)である(図1)。

図1 固定価格買取制度における風力発電の買い取り価格と期間(出典:経済産業省資源エネルギー庁)
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 買い取り期間はすべて20年で、10キロワット以上の産業用太陽光発電と同じだが、産業用太陽光と比べると高い参入障壁や低い収益性のため、FIT施行後しばらくの間、風力発電の市場は伸び悩んでいた。

 しかし、コスト面を考慮して新設された洋上風力では、買い取り価格が下落したメガソーラーからシフトする形で新規のプロジェクトが動き出した。北海道の稚内港内、青森県のむつ小川原港内、秋田県能代港周辺、新潟県村上市岩船沖など、いずれも風況の良い地域で、数万~20万キロワットの風力タービンを大規模で洋上に設置する調査や準備が進められている(図2)。

図2 計画中または準備中の洋上風力発電プロジェクト(出典:経済産業省資源エネルギー庁)
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 それでも、FIT施行後の3年ほどで急速に普及した太陽光と比較すると、風力発電の伸びは遅い。経済産業省・資源エネルギー庁が公表したデータでは、2014年10月末の時点で新規に設備認定された導入容量は、太陽光が住宅と非住宅(産業用)を合わせると1378万キロワット。これに対して、風力の導入容量は、わずかに20万キロワットと、太陽光の1.5%にも届かない。

図3 太陽光発電システムの販売事業者が「第8回[国際]太陽電池展(PV Expo 2015)」に出展していた小型(出力:3kW)の風力発電機(出典: 日経BPクリーンテック研究所)
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 今後、太陽光発電と同様に風力発電をさらに普及させるためには、そのための仕組み作りが必要だろう。洋上の大規模プロジェクトだけでは、大企業にしか参入できない。中小規模の事業者でも始められるような事業環境の整備が望ましい。

 特に、20キロワット未満のカテゴリーは買い取り価格が高いため、中小規模の太陽光発電事業者やシステム業者も「ポスト太陽光」の有力候補として注目している(図3)。設備認定された機器が増え、初期投資を数年程度で回収できる事業性さえ確認されれば、50キロワット未満の太陽光発電と同様に市場が急成長する可能性を秘めている。