日本は、もっと“ものづくり”で世界に貢献できると思う。そのためには「失敗を恐れ、挑戦を避ける企業体質」という壁を乗り越えることが求められる。この壁を見事に乗り越えた企業の成功事例の一つとしてコマツを挙げたい。ベンチャー企業としてではなく、ものづくり老舗としての本業でこの壁を乗り越えたからであり、従業員の意識改革から企業体質を変え、建設機械の分野において世界基準のビジネスモデルを構築したからである。

コマツが車両管理システム「KOMTRAX」を標準装備した建設機械「PC200」(2001年7月発表)
コマツが車両管理システム「KOMTRAX」を標準装備した建設機械「PC200」(2001年7月発表)

 この背景には、2001年に「ダントツ商品」開発プロジェクトを開始、利益率が下がっても車両管理システムを標準装備することを決断した社長(当時)の坂根正弘氏という、ものづくりイノベーターの存在があった。コマツといえば、ブルドーザー、油圧ショベル、ダンプトラックなどの建設機械メーカーである。車両管理システムのそもそもの発想は車両の盗難防止だったというが、その目線には「きめ細かいサポートが顧客の信頼につながる」との信念があった。

 車両管理システムを標準装備させて販売し、サポートをしっかり行う。「ものをつくって販売して終わり」というスタイルではなく、GPSとITを活用することで、新しい建設機械とサービスを、さらには社内業務や組織人事体制までを含めたビジネスモデルを、約15年かけて刷新してしまった。ここに、ものづくりイノベーターの姿がある。

 ものづくりの定義を変えた坂根氏のリーダーシップはもちろんであるが、本業としてのものづくりを変革するには、一人のイノベーターだけの成果ではできない。彼を理解し活躍の機会を与えた上司がいた。彼の言動に呼応した社内他部門の同僚やサプライチェーンで働く人々も、従来のものづくりの定義を変えビジネスモデルまでも変えることに貢献した「ものづくりイノベーター」である。今回と次回にわたって、私たちが学ぶべき教訓を明らかにしたい。

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