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 トヨタ自動車の燃料電池車「MIRAI(ミライ)」を世に出すためには、膨大な数の要素技術の開発が必要だった。なぜ、それが可能だったのか? どのようなリーダーシップが、プロジェクトを成功に導いたのか? MIRAIの開発プロセスを開発責任者の田中義和氏に聞いた。

車両と燃料電池を並行して開発


――MIRAIの中核技術は燃料電池。ここにはさまざまな新技術が投入されています(第3回 『想定外の問題』、トヨタの燃料電池車に発売延期の危機も」参照)。それに加え、炭素繊維強化樹脂(CFRP)を使った高圧水素タンクや燃料電池の特性を生かしたパワーマネジメント、新構造フレームを採用した車体など、実に多くの開発テーマがありました。どのように対応したのでしょうか。

田中義和氏
たなか・よしかず:トヨタ自動車製品企画本部ZF主査(燃料電池車「MIRAI」の開発責任者)

田中氏 通常のガソリンエンジン車の開発は、新規開発の要素もありますが、エンジンやトラスミッションなどの中核ユニットは基本的には出来上がっていて、それを組み合わせてクルマに仕上げるのが流れです。しかし、燃料電池車の場合、多くのユニットが新規開発となります。そのため、ユニット開発が新車開発の大きな比重を占めます。トヨタ自動車では、燃料電池などのユニット開発は専門部署であるFC技術部が担当しています。


 私はプロジェクトリーダーなので、クルマそのものの開発とFC技術部が担当する燃料電池関連の技術開発の両方に深く関わりました。中核技術である燃料電池関連の開発を一緒になって進めないとクルマづくりができませんから。


 プロジェクトリーダーは開発の課題と現状を知らないと適切な目標仕様の設定ができません。これらを知った上で目標仕様を決めます。ところが、仕様を厳しくしすぎると開発そのものが破たんし、ユルユルになると顧客に感動してもらえるようなクルマにはなりません。ここは、ユニット開発部隊との真剣勝負になります。


 FC技術部の技術者の中には、15~20年間も、そのユニット開発に心血を注いできた人たちがたくさんいます。ですから、開発責任者になった人間がある日突然偉そうに指示を出しても決してうまくいきません。下手をしたら取り返しがつかない大げんかです。高い目標を求めたので、実際にケンカは何回もしましたが、誠意を持って逃げずに話したことで腹を割って話せる環境を構築することができました。

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