木下 女性の場合は、サバイバル術としてやむを得ないところがあるんだと思います。制度は整ってきているかもしれないけれど、出産や育児をキッカケに会社で仕事を続けるかどうかという判断に直面するので。

 本来は、そこで仕事を一時中断しても戻れる可能性があるべきだけど、今の日本ではライフイベントで仕事を中断してしまうと再びフェアな形で組織に戻ることはなかなか難しいなどさまざまな問題がある。女性は「キャリア=人生」と捉えています。でも、男性、特に大企業など恵まれた環境にある人は「キャリア=会社生活」と思っている印象が強いですね。たぶん、瀬川さんと長岐さんは、考え方が違うんだろうと思うんですけど(笑)。

瀬川 まあ、違うから“やさぐれた”わけだね(笑)。

長岐 祐宏(ながき・ゆうこう)
1989年4月にセイコーエプソンの販売子会社であるエプソン販売に入社。約11年間、営業や技術、サポートの販売現場経験を得る。米DEC社との共同プロジェクトに参加し、ネットワーク技術の資格を取得。2000年からセイコーエプソンでプリンタ事業部、デバイス事業部、新規事業開発本部、システム事業部、開発本部の複数部門を経験。主に、新規商品の開発企画や事業企画を軸に活動する。特に2006年以降は他社と連携した大型新規プロジェクト(小型プリンターや小型プロジェクター、ハイビジョンビューワーなど)をリーダーとして取りまとめる。人事部を経験後、2013年11月に退職。他社のビジネスアドバイザーを行い、2014年10月にビジネスの新しいビジョン開発や、プロデュースを手掛ける「MARCURY VISION」を設立、代表を務める。(写真:花井 智子)
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長岐 大切なことは男女の違いということよりも、もっと根本的なところにある気がしますね。若者でも、シニアでも、会社でバリバリと働く世代でも、「本当は別にやりたいことがある」と思っている人は少なくない。でも、いろいろなしがらみで諦めざるを得ない状況があります。そういう「やりたいこと」を支援したり、訓練するのが本来のコーチングですよ。

瀬川 確かに、会社生活を終えた定年退職後にいろいろ学ぼうと思っても遅いよね。

長岐 例えば、会社員生活の中で資金調達の方法なんて、誰も教えてくれないじゃない。

木下 そうですよね。会社を辞めるときにすごく印象的なことがありました。「辞めます」と周囲の人に言うと「これからどうするの?」という話になるわけです。そのときに「学校に行きます」と答えたら、9割以上、ほとんどの人から「うらやましい」という言葉が出てきました。

瀬川 それは、女性?

木下 男性も含めてです。「もったいない」ではなく「うらやましい」と。すごく今の時代を象徴しているなと思いました。現状のパラダイムの中で自分がやっていることを100%正しいと、多くの人は思っていないのではないでしょうか。

 大学院ではクラスに50人くらいの同級生がいます。社会人もいますが、ほとんどは「私に子供がいたらこれくらいの歳だろう」という24~25歳の若者です。彼らと2年間を一緒に過ごして、ものすごく大きな気付きがありました。私の同世代に比べると、圧倒的に優秀な人が多いんですよ。プレゼン能力も高いし、コミュニケーションもできる。

瀬川 学部から上がってきた大学院生たちですね。これから就職先や仕事を選ぼうという人たちだ。

木下 そうです。ただ、優秀ではあっても、就職や将来への感覚は、実は私たちの世代が若かったころとそんなに違わない。最近は、転職も普通になっているとか、起業する人も珍しくないとか世の中では言われていて、若者の選択肢は増えている印象がありますけど。