木下 年上なので、同級生にめちゃめちゃ就職の相談をされました。でも、思っていたよりもコンサバなんです。「世の中、いろいろあるよ。私みたいに、こんな歳でも学校に来ている人もいるしさ」と話すと、「いや、それは特殊ですよね」と言われてしまう。

 確かにメディアではスタートアップ企業の話が多く取り上げられて世の中が変わっているかのように喧伝されているけれど、若い同級生たちには近くにいる大人たちがチャレンジしているようには見えないんですよ。つまり、「チャレンジすることは、ハッピーなことではない」というロジックになっている。

瀬川 それは、男女を問わず?

木下 ええ。

長岐 でも、男性の方が保守的な印象がありますけどね。

瀬川 秀樹(せがわ・ひでき)
クリエイブル 代表、元リコー研究開発本部・未来技術総合研究センター所長。大阪大学工学部精密工学科卒業後、32年半、リコーに勤めた。光ディスクの技術者、 光ディスク国際標準化委員会の日本代表団メンバーなどを経て、米国シリコンバレーに5年半駐在した。同地では、ベンチャーへの直接投資(CVC)や、新規事業の提案/立上/撤退に従事。その後、リコーで技術戦略室長、新規事業開発センター副所長、未来技術総合研究センター所長などを歴任。近年はインド農村部でのBOPプロジェクトも興しリーダーを務めた。 2014年9月に退職、同年10月に「Creable(クリエイブル)」を設立し新規事業開発コンサルや若手育成研修などを行っている。また、「勢川びき」のペンネームで4コママンガ作家としても活動中。(写真:花井 智子)
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瀬川 創発の観点で考えると、ダイバーシティー(多様性)が高いほどいい。だから、男性と女性は同じくらいいてほしいじゃない? 

 でも、実際は違う。最近、ある省庁が主催したプログラムに携わりました。技術者が集まって新規事業を考えて提案するという研修のような取り組みです。その最初の成果発表会で驚いたことがあって。次のフェーズに残った十数チームで女性がゼロだったんです。

木下 えー。信じられない。人類の半分は女性なのに(笑)。

瀬川 なぜなんだろうと思ったんだよね。もちろん、技術ベースの取り組みだから男性の比率が高いということは可能性としてある。でも、例えばシリコンバレーで同じ取り組みをしたら、もっと女性の比率が高いと思うんです。少なくともゼロということはない。それがなぜなのかが、分からなくて。

木下 今、昭和女子大学のキャリアカレッジで事務局長を務めています。これは社会人女性向けのビジネススクールで、三つあるコースのうち一つが起業家志望の女性だけを集めた起業家養成コースなんです。

 私自身は、女性だけを集める取り組みが実はあまり好きではありません。でも、現状では広く募集すると、結局男性しか集まらないんですね。実際は、面白いことをやっている女性はたくさんいるんですよ。でも、社会の中では、やはり圧倒的にマイノリティーです。だから、女性は動いているんだということを世の中に見せていかなければならないと思って取り組んでいます。

瀬川 さっきから話を聞いていると、木下さんは若い人の相談役になっていますよね。喫茶店のマスターみたいに。最近は、占い師と言われているとも聞くけど。

長岐 確かに、そういう雰囲気はありますね(笑)。

木下 えー、そうですか。まあ、確かに無駄に説得力があるとはよく言われますけど。

 占い師の仕事って、結局は背中を押すことだと思うんですよ。多くの人は、本当に悩んで合理的な答えが欲しいわけではなく、自分の中で「何となくこうだ」という答えを持っていると思っているんです。

瀬川 そこでポンと背中をね。

木下 そうなんですよ(笑)。