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 タイのV-ガリバー社のマネージングディレクター・野村勝志氏はいつも明るい表情を絶やさない人だが、10カ月前の悪夢を思い出したときだけは、一瞬、眉間にしわをよせた。

 2014年5月20日、タイ国軍は全土に戒厳令を発令し、翌々日の22日にはクーデターを宣言した。タイでは2006年9月にもクーデターが起きている。その後、タクシン元首相を支援するグループと反タクシン派の対立が継続。2013年後半にはバンコクを中心に、全国各地で大規模なデモが発生するなど混乱が続いてきた。

 だが、その当時はバンコクにいても「政治情勢は不安定だが、経済は順調」と、同国の将来を楽観視する人が多かった。

 特に自動車の国内販売市場は2012年に過去最高の143万台を記録し、続く2013年も132万台と盛況だった。初めてクルマを買う人を支援するためにタイ政府が始めた「First Car Buyer」プログラムによる物品税の免税などが奏功したのだ。

 そうした好況ムードのなか、日本の中古車販売大手、ガリバーインターナショナルが、ASEAN戦略の一環としてタイに1号店を開業したのが2014年3月17日。クーデターの2カ月前である。

図1 ガリバーのタイ進出1号店
バンコク近郊のシーナカリン大通り沿いにあり、クーデター直前に盛大な開店式典が開かれた。
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 開業の式典には、タイの大手銀行各社の幹部や地元メディアなど100人以上の人が詰めかけた。タイではまだ未成熟な中古車の適正価格販売と行き届いたアフターサービスの実現を目指すガリバーの出店は、「日本発の中古車ビジネスが上陸」と大いに期待を集めたのである。ガリバーの当初目標では、2014年中にタイ国内で少なくとも15店舗まで事業を拡張し、2015年には100店舗を目指すとしていた。

 だが、そこにクーデターが直撃したのだ。

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