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 インキュベーター(incubator)の業界に革命が起きるかもしれない。インキュベーターといっても起業を支援する人たちのことではない。体温調節機能が不十分な未熟児を守る「保育器」の話である。実は、発展途上国では保育器がほとんど普及していない故に、多くの未熟児が生まれて間もなく命を落としている。

 James Roberts氏が開発した保育器「MOM」は、この問題を解決できる可能性がある。コストは既存の製品の1/100。サイズも圧倒的に小さい。途上国の病院が導入しやすい設計なのだ。

 その画期的なコンセプトが高く評価され、2014年には「James Dyson Award」の国際選考で最優秀賞を受賞した。そして現在、Roberts氏は自身の会社を設立し、MOMの製品化に向けて奔走している。それまで保育器に関する知識が全くなかった同氏は、どのようにして画期的なコンセプトを創出したのか。その過程に迫った。(聞き手は、高野 敦=リアル開発会議)
 James Dyson Award 世界各国・地域の大学生/大学院生/卒業後4年以内の卒業生を対象とした、次世代のデザインエンジニアを表彰するアワード。英James Dyson Foundationが運営している。現在、Webサイトで2015年度の応募を受け付けている。
James Roberts氏とMOM
右がJames Dyson Award受賞作品の「バージョン1」、左が改良を加えた「バージョン2」。(写真:加藤 康)
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――これが受賞作品ですか。

Roberts これは、完成したばかりの「バージョン2」です。

――もうバージョン2があるのですか。すごいスピードですね。MOMは、既存の保育器と何が違うのでしょうか。

Roberts 違いは、二つあります。一つは、コストです。既存の保育器は、約3万英ポンド(日本円で約540万円、1英ポンド=180円で換算)もします。一方、MOMのコストは250英ポンド(同4万5000円)です。素材の工夫などでかなり安くできました。

 もう一つは、サイズです。既存の製品よりも圧倒的にコンパクトです。しかも、使わないときは折り畳んで保管できます。発展途上国は病院のスペースが限られているので、サイズは非常に重要です。

――そんなに安く作れるのですか。

Roberts 既存の技術を組み合わせることで実現しました。