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 電力ビジネスはボリュームがモノをいう世界です。火力発電のコストに占める燃料費の割合は7割とも言われます。燃料費の圧縮こそが、電気料金の引き下げに大きく効いてくるのです。燃料を安く調達するためには、ボリュームが必須です。

 3.11以降、日本では天然ガス火力の比率が上昇し、LNG(液化天然ガス)の調達力が特に重要になりました。日本のLNG調達量のトップは東電、ナンバー2は中部電です。2トップによる新会社JERAの調達量は年間4000万トン。これは、韓国コガスに匹敵する世界最大規模の調達量です。国内では、後を負う東京ガスを大きく引き離し、図抜けた存在になります。規模とノウハウを活用すれば、JERAの売る電気は、相当安いものになるでしょう。

 JERAは合従連衡のシンボルであることに加えて、もう1つ自由化進展のカギを握っています。それは「JERAが電気を誰に売るのか」ということです。

 電気は色も匂いも形もありません。付加価値が付けにくい商品だからこそ、消費者への訴求点が価格になりがちです。JERAが、全面自由化後も親会社である東電と中部電の小売り部門にだけ安価な電力を卸す場合、いくら2020年に発送電分離をしたとしても、現在のマーケット構造が大きく変わることはなさそうです。

 ところが、JERAが新電力など、他の小売事業者へも卸すようになると話が変わってきます。発電から小売りまでの全てを備えた電力会社の垂直統合モデルが、名実ともに崩れるわけです。JERAから安価な電気を調達する新電力の競争力も高くなります。

 JERAの保有する電源は当面、東電と中部電の小売りを満たすので精一杯でしょう。ですが、JERAが発電所へ投資を始めれば、他社に販売する余地が出てきます。一方で、小売りの競争が進み、東電や中部電の小売り部門が販売する電力量が減る可能性があります。この場合も、他社への販売余力が出てくるわけです。

 一方で、JERAが安住の道を選び、巨大な独占企業に閉じてしまうと、電気料金の低廉化はおろか、電力自由化の意味すら失わせかねません。新会社の誕生が自由化の進展に吉と出るか、凶と出るか。「日経エネルギーNext」では、継続ウオッチしていくつもりです。