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少し先の未来を予測

 この中で最も特徴的なのが「意味理解」である。意味理解は、「Deep Learning(深層学習)」や機械学習という言葉が一般に使われるようになるもっと前から、半導体業界では使われていたが、スマート社会に必要な技術としてクローズアップされることになった。「最近よく聞く機械学習は、意味理解を実現するための手段の一つ」(同氏)である。

 意味理解を説明するために、車の安全運転支援を例に挙げよう。ドライバーは、交通信号、前の車との車間距離、歩行者の有無、並行して走る自転車、路面状況など多くの情報から、瞬時に判断して安全運転することが求められている(図2)。ドライバーの負担を少しでも軽くするために、センサーで情報を集めて周辺状況の意味を理解し、これから起こりそうなことをドライバーに伝える。意味理解は、「少し先の未来を予測する技術」と言える。

図2 自動車に関する意味理解(出典:半導体産業研究所)
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 商店街を走っていて、前を行く自転車がふらふらしていたらドライバーに注意を喚起する。単に自転車を認識するだけでなく、意味理解では自転車が危険な行動を取る可能性が高いことまで理解して、運転支援に生かす。歩行者に対しても、人として認識するだけでなく、道を渡ろうとしている、スマートフォン(スマホ)に夢中で車に気が付いていない、といったとこまで読み取る。

その場で判断が必須

 意味理解には、クラウドに確認してから判断すればよいものと、その場でリアルタイムに判断しなければならないものがある。急ぐ必要がなければクラウドの情報と照合して判断すればいいが、その場で判断しなければならないほど急なこともある。

 例えば、介護施設において、夜中に高齢者が起き上がった場合、トイレへ行くなら付き添いの人が転ばないように付いている必要がある。しかし、高齢者によっては介護施設にいることを忘れて自宅のつもりで歩き出してしまうこともある。

 こういう場合は、上体を起こしたタイミングで判断して、取り急ぎ高齢者に声をかけて待ってもらい、同時に付き添いの人に知らせなければならない。緊急の場合は、クラウドに照合せずに、その場で起き上がるしぐさから意味理解する。

 もう一つクラウドに問い合わせていられない理由がある。通信トラフィックの問題である。町中にセンサーが設置されると、そこから出てくるデータ通信量は膨大になる。なるべくクラウドへのアクセスは少なくし、アクセスするとしてもアップロードするデータは極力少なくしたい。そうしないと、通信回線が常に満杯になり、さらに判断は遅くなる。