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 記者としてさまざまな人に話を伺っていると、時に相反する見解に出くわします。「顧客の声をよく聞いたから成功した」と言う人もいれば、「顧客の声を聞かなかったから成功した」と言う人もいる、といった具合です。

 ここ最近、日経テクノロジーオンラインの「新産業」サイトで最も読まれた記事は、「顧客の言うままに作ると、たいてい大失敗します」でした。この記事は、メンテナンス用ロボットなどの開発で実績を上げているイクシスリサーチの代表取締役である山崎文敬氏に、ロボット開発のベンチャーを立ち上げた経緯や、「現場で使われるロボット」を開発するための極意を聞いたもの。本来は日経テクノロジーオンラインの有料読者だけが読める記事ですが、2015年4月30日までの期間限定で誰でも読めるようになっていることもあってか多くのアクセスを集めました。

 山崎氏は、「顧客から言われるままにロボットを開発するとたいていの場合、大失敗する」と断言します。なぜなら、顧客の頭の中にあるロボットのイメージと、実際のロボットが貢献できることは必ずしも一致しておらず、ロボットに対する顧客のニーズは、本当の意味でのニーズではないことが多いからです。従って、顧客が言う要求を疑ってかかる必要があると同氏は言います。

 ただし、山崎氏は顧客の意向を無視しているわけではありません。むしろ、その逆です。イクシスリサーチでは、顧客からの問い合わせを受けると、まず「現場を見せてください」と申し出るそうです。そして、同氏をはじめとするロボットの専門家が実際に現場を見て、顧客の潜在的な「ニーズ」を掘り起こし、顧客ごとの最適解を見つけ出すのです。ロボットを使う意味がないと判断した場合、「無駄だからやめましょう」と言うこともあるといいます。

 顧客の声を聞くのが正しいのか、それとも聞かないのが正しいのか。多分、この問い自体が本質的ではないのでしょう。重要なことは、顧客のためを考えているかどうか。「市場規模」や「アンケート調査」といったあいまいなものばかり見ているとつい忘れがちなことを、山崎氏のインタビュー記事は思い出させてくれます。