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今、FMEAを学ぶ日本メーカーの技術者が増えていると語る國井氏
今、FMEAを学ぶ日本メーカーの技術者が増えていると語る國井氏
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──経験していないトラブルを想像できないという点に戻りたいのですが、なぜ、想像できないのでしょうか。

國井氏:想像する道具を持っていないからです。

──なるほど、多くの日本企業は想像する道具を持っていないんですね。しかし、ブレーンストーミングは使えませんか?

國井氏:確かに、ブレーンストーミングはよく聞きます。他人のアイデアを否定してはいけないとか、他人のアイデアに上乗せしていくとか。しかし、限界があります。ある日本メーカーで実験してみたんです。空のペットボトルを使って自由な発想で利用価値を考えましょう、と。真ん中で割って土を入れてプランターにするとか、先端に穴を開けて水鉄砲にしたり、スポイトにしたりとか。しかし、時間的には30分が限界で、出てきたアイデアは30個ぐらい。その後は飽きてしまって、会社の愚痴の話になってしまう。
 しかし、良い道具があります。

──それは何ですか。

國井氏:発想の道具は2つあります。1つはTRIZ。韓国企業はこちらを選びました。そして、もう1つが「シナリオライティング」です。技術者なのに、小説を書くんです。「2001年宇宙の旅」みたいな。シナリオライティングによって、経験していないトラブルを想像する。両方とも導入すると弊害が出るので、私はどちらかを選んでもらっています。しかし、技術者に小説家になってもらう方が楽しいようです。

──これはどのようなものなのでしょうか。

國井氏:例えば、ある人に「Lexus」を購入したオーナー役になってもらう。すると、高級車を自慢したいから、高級なじゅうたん(フロアマット)を見せたいわけ。ところが、雨の日に買い物に行く際には、その上に安いゴムのシートを敷く。

──汚したくないから。

國井氏:そうそう。でも、ゴルフに行くときには、ゴムのシートを外して友達に自慢したい。オーナーの立場になれば、そうした気持ちが分かるよね。そして、別の人に、この立派なフロアマット君になってもらう。また別の人には、安いゴムシート君の役をやってもらう。そして、4人めには、アクセルペダル君を演じてもらう。この4人でシナリオを書いていくんです。さながら演劇学校のように、会話をしながら脚本を書いていくわけ。

  フロアマット君が「何だ、安っぽいゴムマットを俺の上にかぶせる気か」と言えば、ゴムシート君が「うるせえな、俺のオーナーがお前を汚したから、俺がわざわざ来てやったんだよ」と返す。ここにアクセルペダル君が登場し、ゴムシートに引っ掛かった状態を「安物、お前どけよ、時速190kmで飛ばしてるんだぞ。戻れないじゃないか」という具合に進めていく。

 口ではみんな「お年寄りの立場で考えよう」「子どもの目線で見ましょう」などと立派なことを言うんですよ。そして、「はい、分かりました」と。でも、何が分かったのというの? じゃあ、具体的にどうするのかハウツーを聞きたい。でも、答えられないことが多い。

 顧客の観点で足りないものを知るには、私の経験上、シナリオライティングしかない。実際に製品が使われる場所とは異なる、明るくて静かで快適な設計室のような場所で、ユーザーの目線になれと言っても難しい。だから、登場する部品の役になりきって考えるというのが、シナリオラインティングの特徴なのです。