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 「高品質」の代名詞とも言える日本メーカーの自動車。その大規模リコールが止まらない。日本メーカーの製品の品質に異変が生じているのではないか?──。設計開発プロセスの革新を実現するモジュラーデザインの第一人者であり、「技術者塾」において(1)「世界自動車産業のモジュール化の潮流と対応」〔2015年11月17(火)〕、(2)「自動車のモジュール化 2日間実践セミナー」〔2015年12月8日(火)・9日(水)〕の講座を持つ、モノづくり経営研究所イマジン所長の日野三十四氏に聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──自動車業界で大規模リコールが止まりません。日本メーカーの製品の品質が落ちているのでしょうか。

日野氏:日本メーカーの品質は落ちているというよりも、「停滞している」という表現の方が正しいのではないでしょうか。落ちてはいないけれども、高まってもいないという状態です。

──なぜ、停滞しているのでしょうか。

日野氏:日本メーカーの高品質を支えてきたTQC(統合的品質管理)や、TQCに欧米のマネジメント要素を取り込んだTQM(総合的品質管理)をやめてしまったからでしょう。1990年代、いわゆる「バブル景気」の崩壊により、日本メーカーは全体的に自信を失いました。そこから脱するために、米国式の経営管理手法を日本メーカーは積極的に導入しました。MRP(資材所要量計画)やERP(統合業務パッケージ)、SCM(サプライチェーン・マネジメント)といったものです。ところが、これらは主に財務管理を強化するためのもので、品質については後回しになってしまった。そして結果的に、多くの日本メーカーはTQCやTQMをやめてしまったのです。実際、この頃、日科技連などでも品質関連の講座の受講者が大幅に減ったと聞いています。

──米国式の経営管理手法で効率化を図れば、品質の向上にもプラスに作用する気がしますが…。

日野氏:問題は、手を広げすぎたことです。その歪みは、やがて品質に現れる。手を広げて忙しくなりすぎ、皆がアップアップの状態になると、しばらく経ってから症状が現れるのが品質問題なのです。品質の異変は、すぐには分からない。例えばコストの問題は数字で見えるので、すぐに分かります。目標に達しなければ、コスト削減の対応策を強化して目標値を達成することは比較的簡単です。ところが、コスト削減が行きすぎたとしても、直ちに品質が低下するわけではない。徐々にむしばまれていくのです。日本メーカーの品質は2000年以降に停滞するようになりました。1990年代にTQCやTQMをやめてしまった歪みが、今、無視できない品質問題として現れてきたということでしょう。

──日本メーカーは品質の高さを特徴にし、それを自負してきたはずです。それなのに、なぜ、高品質を支えてきたTQCやTQMをやめてしまったのですか。

日野氏: TQCやTQMの短所ばかりに目がいったからでしょう。それは、形式主義に陥りがちな点です。例えば、QCサークルでは、中身はともかく部署内で格好良く発表することが目的になってしまうことがありました。こうした点に嫌気が差して、ある大手メーカーが先陣を切ってやめたところ、それに追従する企業が増えていきました。これに対し、かたくなにTQCやTQMを続けたのがトヨタ自動車です。同社は本音ベースで仕事をするため、形式主義が社内に存在しないのです。しかし、日本メーカー全体から見ると、TQCやTQMを続ける企業は少数派になってしまいました。

──今後、どのような企業で品質問題が生じる心配がありますか。

日野氏: やはり、短期間に急に生産数を増やしたメーカーでしょう。また、日本メーカーには、ソフトウエアのモジュール化が遅れている企業があります。そうした企業は注意が必要です。