かつてソニーが、新聞に「出るクイを求む」という求人広告を出したのはつとに知られています。筆者は、そのソニーで周囲の反発にもめげずにSCM改革などを主導した横田宏信氏。自ら「出る杭」を自負する同氏は、現在「出る杭」人材の育成などを手掛けています。そんな同氏が、古巣のソニーや今の経済、世の中を、出る杭ならではの独自の「眼」で斬ります。
経営コンサルタント/O2 戦略ディビジョン プリンシパル

著書に『ソニーをダメにした「普通」という病』がある。筆者のオフィシャルサイトはこちら。
みんな本質を分かっていない【最終回】
我々は、事物が「プラスの感情」を引き起こす作用を持つとき、その事物は「良い」、すなわち、その事物は「良さ」を持つと言う。事物が「マイナスの感情」を引き起こす作用を持つとき、その事物は「悪い」、すなわち、その事物は「悪さ」を持つと言う。また、これまで述べてきたように、「価値」とは、事物が持つ直接的・間…
みんな本質を分かっていない【その7】
これまで本質についていろいろ語ってきたが、どうしても見ておくべき哲学上のテーマは、もう1つある。それは、「正しさ」である。我々は、「思念」(精神内部の「事物の像」)、すなわち「考え」がその対象である事物に当てはまるとき、その考えが「正しい」という。このときの「正しさ」は「真」である。また、我々は、人…
みんな本質を分かっていない【その6】
「意味」とは、「感じるもの」であり、「感じるもの」とは、見方を変えれば「感じさせるもの」だ。そして、「感じさせるもの」とは、「影響」の1種であるから、「意味」とは「影響」の1種である。そして、前々回に私が示した「6つのカテゴリー」が正しければ、この世には、この世の「構成要素」を分類した「物質」「作用…
みんな本質を分かっていない【その5】
「事物」は、認識されてはじめて我々にとっての「事物」となる。ならば、「事物」を分類する上で、認識の構造を把握することは役に立つはずだ。そこで、認識の構造も見ておきたい。「認識」には、1つの単語が付与される「認識」と、複数の単語が付与される「認識」がある。そして、複数の単語が付与される「認識」は、1つ…
みんな本質を分かっていない【その4】
「本質」とは、精神の内部に発生する「事物の像」の内、存在する事物に当てはまる「存在しない事物の像」、すなわち「観念」の一種である。そして、「観念」は、「存在しない事物の像」であるにも関わらず、我々が現実を把握する上で欠かせない、不思議と言えば不思議なものだ。今回は、その「観念」を掘り下げることを通し…
みんな本質を分かっていない【その3】
精神の内部に発生する「事物の像」には、「存在する事物の像」と「存在しない事物の像」がある。この内、「存在する事物の像」には、存在する事物に当てはまるものしかない。対して、「存在しない事物の像」には、存在する事物に当てはまるものと、存在する事物に当てはまらないものがある。そして、「存在する事物の像」は…
みんな本質を分かっていない【その2】
古代から続く哲学上の論争に、中世においては「普遍論争」と呼ばれた「普遍は存在するか」をめぐるものがある。一匹一匹の「猫」としての「猫」のような、1つひとつの「ある事物」としての「ある事物」を「個別」とし、全ての「猫」としての「猫」のような、全ての「ある事物」としての「ある事物」を「普遍」とするとき…
みんな本質を分かっていない【その1】
これまで本連載の中で何度も述べてきたように、本質とは、事物から偶有性(個別の事物がたまたま持つ属性)を全て捨象する(捨てる)ことで求められる、事物の普遍的な特徴である。また、「○○とは何か」という問いに対する答え(=××という普遍的な特徴を持つもの)、すなわち「万物における事物の定義」でもある。
経営者は、本質を分かっていない【下】
これまで、本質に迫れていたのにそうではなくなった古巣のソニーと、本質に迫れているべきなのにそうではないコンサルタント、エコノミスト、経営者を引き合いに出しつつ、ビジネスや企業、価値の本質とは何か、本質に迫れると何が見えるのか、などに付いて述べてきた。今回は、経営の本質とは何かを明らかにした上で経営の…
経営者は、本質を分かっていない【中】
本質に迫れると、何(どのような「事物の本質に準じる考え」)が見えるのか。顧客価値を生まない業務を削減すべきであるという考えは、普通、そんなの当たり前と思われるものだ。コストダウンをすべきという考えと混同されるものでもある。しかし、「顧客価値を提供すること」というビジネスの本質に迫れると、顧客価値を…
経営者は、本質を分かっていない【上】
繰り返し述べてきたように、価値の本質がまだ解明されていないということは、人類は、「顧客価値を提供すること」であるビジネスの本質も、「ビジネスマン(ビジネスを行う人間)の集まり」である企業の本質も分かっていないということだ。だから、経営者もビジネスや企業の本質を分かっていない。
エコノミストは、本質を分かっていない【下】
何度でも繰り返すが、世の中のビジネスから偶有性(個別の事物にたまたま当てはまる属性)を全て捨象(捨てる)すると、顧客に価値を提供して対価を得ることだけが残る。よって、ビジネスの本質とは「顧客に価値を提供して対価を得ること」であるが、古代ギリシャの頃から研究されてきたにも関わらず、その要素である「価…
エコノミストは、本質を分かっていない【上】
ビジネスの専門家とされるコンサルタントの次にダメ出しするのは、経済の専門家とされるエコノミストである。その内、今回は経済アナリスト、次回は、勇気を出して経済学者にダメを出す。何度でも言うが、事物の本質とは、事物から偶有性(個別の事物にたまたま当てはまるもの)を全て捨象する(捨てる)ことで得られるも…
コンサルは、本質を分かっていない【下】
前回、コンサルタントはビジネスと企業の本質を分かっておらず、ゆえにビジネスも企業も分かっていないと述べた。だから、彼らは、企業の経営を誤らせかねない者である。なのに、ビジネスの専門家のつもりになって、企業を支援しているつもりになっている。しかし、それだけではない。
コンサルは、本質を分かっていない【上】
コンサルタントの私が言うのもなんだが、私は、コンサルタントが嫌いである。ここで言うコンサルタントとは、企業の経営、すなわち「ヒト、モノ、カネ、情報」の活用を支援するサービスを提供する者である、経営コンサルタントを指す。よく知られる分類に従えば、いわゆる戦略コンサルタント、業務コンサルタント、ITコ…
ソニーの中期経営方針に物申す 【最終回】
かつてのソニーは、どこよりも本質に迫れていたからこそ、奇跡と言われ、神話ともされた大成長を遂げた。しかし、今のソニーはそうではない。今回の中期経営方針も本質から乖離したものだ。だから「ソニーは、経営陣から本質に回帰せよ」。これまで、価値、ビジネス、企業の本質と、それらに準じる本質的な全体最適に基づ…
ソニーの中期経営方針に物申す【その4】
今回は、「価値」と「全体最適」を深掘りしつつ、ソニーの中期経営方針や関連事項に触れていきたい。まず、「価値」から掘り下げる。前回述べたように、エコノミストやコンサルタントなど、経済・ビジネスの専門家とされる人たちの多くは、「企業価値」を投資家という特定のステークホルダーにとっての価値とする考えを持っ…
ソニーの中期経営方針に物申す【その3】
前回と前々回は、人間(ビジネスマン)の集まりという「企業の本質」に準じて、ソニーの中期経営方針の基本をなす3つのうちの2つ、「各事業ユニットの自立と株主視点を重視した経営」と「事業ポートフォリオの観点からの各事業の位置づけの明確化」へのダメ出しをした。続いて今回は、「ビジネスの本質」に準じて、残る1…
ソニーの中期経営方針に物申す【その2】
企業の本質がビジネスマンという人間の集まりである以上、本来、企業の基本的な方向性を示す中期経営方針に、その大半を占める従業員についての項目がないなどということは、あってはならないことである。しかし、実際、ソニーの中期経営方針に従業員についての項目はない。これまでマスメディアで報じられた記事を見る限り…
7年ぶりにソニーの今を書く