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水平分業化されている弊害なのか?

――先ほど、アナログ技術は領域が幅広いとうかがいました。

小林氏 一口にエレクトロニクスといってもその領域が多岐にわたるように、必要とされるアナログ技術は分野によってそれぞれ異なっています。例えば、アナログを大別しますと、オペアンプやA-D変換器のようなベースバンドを扱うアナログ、高周波を扱うアナログ、パワー系を扱うアナログなどがあり、それぞれ専門の技術者・研究者がいます。さらに、メーカーの分野によっても必要とするアナログ技術が異なってきます。半導体メーカーであれば半導体チップを設計するためのアナログ技術者、セットメーカーであれば機器設計におけるアナログ技術者という形です。

――アナログ技術は多方面で使われ、かつ差異化要因になるのでそれぞれ専門領域があるということですね。

小林氏 もっと広く見れば、アナログ半導体の使う側でも専門領域があります。土木や建築といったところまで範疇に入るでしょう。昨今、土木や建築などの分野で需要が拡大しているひずみセンサーもアナログ技術の1つです。センサーは極めて広範囲で使われています。センサーに使われる技術も多岐にわたり、すべての技術に精通する技術者はなかなかいません。

 アナログ技術は多様です。私の研究室ではアナログ技術の研究を進める上で、各分野でアナログ技術に精通する技術者や研究者に協力してもらっています。例えば電源回路分野の研究においては私の専門領域だけでは不足するところがあるので、関連分野の専門家を何人か客員教授として招聘しています。自分が携わった領域やその周囲の技術は分かりますが、そこから少しでも離れると分かりづらいところが出てきてしまうからです。

――今回、技術者塾にて「アナログ設計連続講座」を監修いただくにあたり、小林先生が腐心されたところも「アナログ技術は多岐にわたる。それぞれの専門家から直接話を聞けるようにする」ということですね。アナログ設計連続講座において、アナログ技術の主要な領域はカバーされているという理解でよろしいですか?

小林氏 今回のアナログ設計連続講座では、アナログ技術の主要な領域はカバーしています。半導体デバイスから基本的な増幅回路、デバイスモデリングやシミュレーション、電子計測技術、アナログ回路の基本となるオペアンプやA-D変換/D-A変換、高周波回路、センサー関連、電源回路で構成します。半導体メーカーや計測器メーカー、機器メーカーで経験を積んだベテラン技術者など、専門領域ごとにさまざまな講師をそろえました。

――昨今、自分の専門分野以外の知識を身に付けることへの重要性を指摘する声が増えてきました。今回のアナログ設計連続講座はさまざまな講義で構成されていますので、多くの分野に接し、技術者としての幅を広げることができると思います。

小林氏 社会人の方と話をしていて、ちょっと驚くことがあります。立派な大学を出て、立派な企業に勤めており、そして自分自身の専門分野に対しては大変詳しいにもかかわらず、自身の専門から少し離れた分野はさっぱり分からないというケースに出くわします。

 水平分業化されている弊害なのでしょうか。自分で経験していないことに対し、「こんなことも知らないとは…」と驚かされます。やはり幅広く技術を身に付けておいた方が、いい仕事ができますよね。そのためにも、勉強の機会は必要だと思います。