今井 そういう意味では、米国はテスラモータースのようなクルマをつくるハードウエアベンチャーも出てくるし、ソフトウエアもやっている。どんどん先に行っている感じですね。
川口 本当に何でもやっているからね。勝てないよ(笑)。
今井 特集で大学発ベンチャーの話を取り上げてみて、そのモデルが米国の後追いという印象が拭えませんでした。
山本 そこは、しょうがないんですよ。だって、もう日本発の産業振興では成功したモデルケースがないわけで、明治維新の殖産振興からやりますかという話になっちゃうので。でも、親方日の丸でやっても、どうしようもないですよね。じゃあ、「今の時代に合ったやり方で」となると、米国の仕組みを見て、日本なりにモデレートしてやっていくしかないんだと思うんですよ。
そうすれば、日本人なりの考え方や経済土壌に見合った合理的な方法も思いつくかもしれない。
今井 なるほど。
川口 米国ではどうなんですか。ある種の要素技術を磨いたけれど、実際にカネにするところが下手だという場合のイグジットは。
山本 自分の見てきた事例でいうならば、成功したパターンはほとんどがバイアウトですよ。「大きなアプリケーションから量産に入っていって、第2のトヨタ、ホンダになるんだ」という話にはなりにくいでしょうね。あるタイミングで会社を売って、資金を得ましょうと。次の施策は、別の仕組みでまたやりましょうという話になりやすいです。
今井 大学発ベンチャー的な人たちが、日本で育っていくためにはどうすればいいのでしょうか。
山本 いいお客さんがいるかどうかでしょうね。大口取引先1社だけでは成り立たないけど、2社、3社あれば充分食べていけるし研究開発も続けていける。
川口 どうしても国産でというニュアンスだったら、要素技術が搭載される製品やシステムが、日本が世界的に強いと分かりやすいですよね。例えば、クルマや化学プラントなどは強い。でも、グーグル的な産業で強い分野はないので、そこは難しそうです。やはりテストベッドとして技術を一番磨いてくれるのは、その分野の勝ち組なので。
今井 例えば、自動車関連の技術を開発するベンチャーだったら、大手自動車メーカーが受け皿になる。
川口 ただ、その場合は、自動車メーカー側が受け皿になる気があるかという問題がありますね。アウトソースを嫌う文化があるから。
山本 自前主義ですからね。気持ちは分かるんですけどね。