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 前回、設計と原価を融合させる「プロフィタブル・デザイン」(利益獲得設計)を提唱し、その中核となる概念「固定費マネジメント」について、米Apple社の「iPhone」の事例に基づいて紹介した。製造業のもうけ(利益)は固定費から得られるので、設計者は固定費をマネジメントしなければならないという主張である。

 何も、ケチケチした設計をすべきというわけではない。コストを意識するあまり、新技術や新機能の投入を控えていては、製品の魅力がなくなり、コンペで勝てなくなる。それでは、本末転倒だ。

 そこで重要になるのが、「設計高度化」という概念である。プロフィタブル・デザインは、「魅力的な製品」と「もうかる製品」の両立を目指す。そのためには、固定費マネジメントと設計高度化の両輪で設計改革を進めなければならない。

 設計高度化を一言でいえば、組織の一人ひとりが持つ経験や知恵、苦労を可視化・体系化・標準化し、組織全体で共有できる形にして、より良い設計を追求することである。筆者は、設計高度化のヒントが、「無印良品」を展開する良品計画の「MUJIGRAM(ムジグラム)」と、マツダの「一括企画/コモンアーキテクチャー」にあると考えている。これらの事例を交えつつ、設計高度化について解説する。

「イノベーション第一主義」への疑問

 初めに、魅力的な製品がなかなか出てこない理由について触れておきたい。なぜ、日本の企業は、魅力的な製品を生み出せないのか。筆者は、昨今はびこっている「イノベーション第一主義」ともいうべき考え方に対して大きな疑問を感じている。

 「日本にはイノベーションがない」「技術主導でマーケティングがない」「強力な企画力がない」「とがった人材を潰す」「(Apple社の創業者で元CEOの)Steve Jobsのような天才を育てていない」――。このような評論をよく聞くが、本当にそうだろうか。イノベーションを狙うことだけが企業を成長させる方策ではないはずだ。普通の人たちが協力することで得られる「全員力」をベースにした開発も、イノベーションと同じぐらい重要だと筆者は考えている。