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 前回は、深刻な業績不振に陥ったシャープが債務超過を回避するために駆使する財務テクニック「デットエクイティスワップ(DES)」を取り上げた。だが、その後さらに新たな財務テクニックを使うことが明らかになった。それは減資だ。

 まず2015年5月9日付の日本経済新聞朝刊などが、シャープは1200億円以上ある資本金を1億円に減資すると報道した。これは99.9%以上の減資に相当する。経営破綻したわけでもない大企業が99%以上の減資をするのは異例のことだ。

 報道を受けて、シャープは「決定した事実はありません」というお決まりのリリースを出した後、5月14日の2015年3月期の決算発表で、資本金は5億円にすると正式に発表した(発表資料)。それでも99.5%以上の減資となる。

 そもそも減資とは何か。そしてシャープの狙いはどこにあるのか。

資本金の額自体は重要ではない

 まず、そもそも資本金とは何だろうか。

 資本金の額を気にする人が少なからずいるが、実は資本金の額に実質的な重要性はほとんどない。資本金とは、株主が会社に払い込んだ金額を基礎として設定される一定の額のことをいう。払い込み時点では、その額に相当する資金が会社にあるが、その後、その資金は何かに使われて姿形を変えているので、現時点において資本金に相当する資金が現実に会社にあるわけではない。資本金の額は、「かつて、株主がその額を払い込んだ」という過去の事実を表すに過ぎない。

 さらに言えば、株主が払い込んだ金額の2分の1までは資本金に入れず、資本準備金にすることが認められているので、資本金の額は過去の払い込みの事実を表しているとも限らない。こうなってくると、資本金とは会社がかなり自由に設定できる“単なる数値”ということになる。その数値(=資本金の額)は制度上、以下のようなものに使われる。

  • (1)会社法上の大会社の判断基準
    資本金5億円以上または負債200億円以上になると、会社法上の「大会社」になる。大会社になると、例えば法定監査義務が発生するなどの縛りが強くなる。
  • (2)税法上の中小企業の判断基準
    資本金1億円以下の会社は、税法上の「中小企業」になる。中小企業には、軽減税率の適用や外形標準課税の不適用など、税制上の優遇措置がある。
  • (3)分配可能額のハードル
    貸借対照表上の純資産は本来すべて株主に帰属するものであるが、配当や自己株式取得などの日常的な株主還元については、純資産が資本金等を上回る額の範囲でしかできない。これによって、会社財産の過度の流出を抑え、債権者保護に役立っている。

 かつての最低資本金制度(株式会社1000万円、有限会社300万円)は現在、完全に撤廃されているので、資本金はいくらにでもできるようになっている。そんな、いくらにでもできる資本金という数値を、いまだに企業規模を測る基準として使い続けているというのも少々おかしな気がする。