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 しかし、将来に向けた投資をせずに、小出しに何度もリストラを繰り返すと、人は疲弊してしまう。また、投資ができない縮小均衡の状況になっていくと、技術者のスキルも徐々に競合企業から遅れていってしまう。売りになる技術が錆付いてきている時に、リストラで転職をせざるを得ないのは、いざとなった時、第二の人生に対しても不利です。

 「会社を潰さないようにできるだけ時間を稼いで耐える」のが会社を潰さないため、経営者としては正解なのでしょうが、その組織で働く技術者にとって幸せなのか、考えさせられます。

 当事者ではないので本当のところはわかりませんが、このような「時間を稼ぎじわじわ衰弱する」経営の正反対をやったように、少なくとも外部からは見えたのがエルピーダメモリでした。エルピーダはDRAMの専業メーカーで、DRAMの価格低下により経営状況が悪化し、2012年の2月に倒産しました。

 私は当時、エルピーダと次世代メモリのReRAM(抵抗変化型メモリ)を共同で開発していました。エルピーダが倒産したのが2月末、つまり年度末の支払期限の直前ですから、支払いを踏み倒された企業も多かった。当時私が在籍していた東京大学もエルピーダからの(小額ですが)支払いを踏み倒され、「債権者」の一員だったように記憶しています。ちょうど私も中央大学に移るための事務手続きに忙殺された時だったので、泣き面に蜂、という経験でした。

 当時、共同開発で定期的にエルピーダの方とは会っていましたが、全く倒産は予測できませんでした。というのも、会社が倒産する日まで、エルピーダは将来への投資をやめませんでした。普通は大学と将来の技術の共同開発などやっている余裕はなかったのでしょうが、研究開発の先行投資だけは続けていた。従って、技術者の方も、疲弊どころか全力で元気に走り続ける(と少なくとも外部からは見える)中で会社が倒産しました。

 当時、半導体の装置メーカーの方も、「エルピーダには大量に装置を納品した直後に倒産で支払いを踏み倒された。まさか潰れるとは全く予想できなかった。」と苦笑いされていました。研究開発だけでなく、事業でも投資を続けていたのでしょう。こういう言い方は失礼ですが、アッケラカンと(少なくとも外部からは見えて)倒産したので、こちらも笑うしかない、という感じでしょうか。実際には坂本社長はじめ幹部の方は資金繰りに大変苦労されていたのでしょうが。