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 その後、米国のメモリメーカーMicron Technology社にエルピーダは買収されました。エルピーダの倒産から3年しか経っていませんが、DRAM市場はV字回復し、昨年度はMicronはエルピーダの貢献もあり前年比37%の増加と大きな利益をあげました。特に携帯端末向けの低電力モバイルDRAMの市場でMicronは弱く、今ではエルピーダに頼りっきりの状態のようです。もし、あと1年エルピーダの資金繰りが続いていたら、エルピーダは復活し、逆にモバイルDRAMが弱いマイクロンを吸収していたかもしれません。

 エルピーダの技術者の方は、倒産した後にボーナスがなくなるなど、大変苦労されたと思います。ただ、少なくとも仕事としては倒産まで投資を続け、技術は世界のトップランナーであり続け、一人のリストラもしていませんので、社内に疲弊したような感じはなかったのではないでしょうか。

 そして、Micronに買収された後は、技術者の方は日本で、あるいは米国のMicronの拠点で元気に仕事をされているように見えます。また、倒産当時のCTOの安達さんなどエルピーダ出身者が、3次元実装した超高速DRAMを手がけるウルトラメモリを起業されたようです(スパコン開発の国内ベンチャーPEZYに、エルピーダ元CTOの安達氏が参画 )。倒産するまで、エルピーダは3次元メモリの研究開発で世界の先頭を走っていましたので、こうしたベンチャーへの展開も可能になったのではないかと思います。

 私が知るのは少数の方だけですので一般化してはいけないかもしれませんが、リストラを繰り返して徐々に衰弱する企業に比べて、エルピーダの技術者は全力で走り、突然倒れ、そしてまたいま全力で走り始めているように感じます。

 会社を存続させるのが経営者が株主に負うべき最大の責任でしょうから、潰れてよかった、とは言えないでしょう。ただ、エルピーダの技術者の方々は、全力で走っている途中で会社が潰れたとしても、また立ち直れる、ということを証明してくれているように感じます。それどころか、Micronに買収されたことで、活躍の場を世界に広げ、今まで以上に活躍される技術者も現れつつある。

 人が働く期間に比べて事業や会社の寿命は短くなり、会社の幸せと個人の幸せが必ずしも同じではなくなりました。会社が潰れても、個人としてはまた立ち直れる。そのためにも、技術者であったら常に技術の世界ではトップでいること、それが可能になる環境を求め続けることが大切ですね。その反対に、会社がまだ存続しているとしても、徐々に衰退していくような環境は、個人としては極めて危険なのでしょうね。