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ニュートンに並ぶ発見

 前回、ボルツマンを追い詰めたエルンスト・マッハの科学観を紹介した。ボルツマンvsマッハ論争で、プランクは当初マッハの側に付いていた。いわば「目に見えないものは信じない」とするマッハの実証主義を煎じ詰めれば、この世の森羅万象は人間の認識を前提に存在し、人間がいなくなればこの世はなくなる、ということになる。

 しかし、ボルツマンの統計力学からエネルギー量子仮説を導き出したプランクはEの公式を見つけた瞬間、「ボルツマンが正しく、マッハは誤っている」ことを確信したはずだ。というのも、プランク定数hは、光速度cや万有引力定数Gと同じく、いつでもどこでも常に決まった値をとる。言葉を換えれば、人間がいなくなっても宇宙は存在する。人間以外の宇宙人だってこの定数を見つけることができるのだ。プランクはマッハのくびきから逃れ、マッハの科学観を批判する立場になる。

 Eの公式を見つけたとき、プランクはベルリン郊外を散歩しながら7歳の次男エルヴィンに「父さんは今日、ニュートンと同じくらい重要な発見をしたんだよ」と語った。その発見とは一般にエネルギー量子仮説のことだと解釈されている。

 でも、そうではないとぼくは思う。「ニュートンと同じくらい重要な発見」とは、人間の認識とは完全に独立した宇宙が現実に存在し、その宇宙を成り立たせている設計図の一つを自分が見つけたことをさしているのだと思う。

 プランクの墓に記された「h=6.62・10-34W・s2」を目にしたとき、ぼくのその思いは確信に変わった。