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 もし墓石に「E」と記されていたら、彼は量子力学の端緒となるエネルギー量子仮説を見つけたことを生涯の誇りとしたことになるだろう。しかしそうではなく、お墓にプランク定数が記された意味を考えると、プランクにとって本質的だったのは、「人間がいなくなっても宇宙は存在する」という事実を見つけたことだった。

 墓石には生没年も書いていなかった。姓名とプランク定数のみ。あとは全く何もない。まっさらな宇宙。不思議な墓だった。

 近くには池があり、墓の周りに花が生けられて墓守が定期的に巡回し、手入れしていた。すぐそばにオットー・ハーン(Otto Hahn、1879~1968年)の墓石があった。長細い墓石の上方に「OTTO HAHN」の文字が大きく刻まれ、下部にはウランの中性子による核分裂の反応式が刻まれている。ハーンはプランクがカイザー・ヴィルヘルム研究所長をしていた時の研究員であり、プランクを心から尊敬していた。「マックス・プランクの横に眠りたい」との遺言に従って、すぐ右隣りに埋葬された。

ゲッティンゲンの市営墓地にあるオットー・ハーンの墓。左に、マックス・プランクの墓がある。
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