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 技術経営とは、技術の研究開発から実用までの全過程に対する戦略・戦術的計画を立案し、それらの遂行を管理していくことである。技術系出身者で料理愛好者でもある筆者からみれば、料理は技術経営と似ているところが多い。今回は、家庭料理と飲食店に分けて料理と技術経営の類似性について考察してみる。

家庭料理のキッチンはラボだ

 家庭のキッチンで作る料理でも、会社の1つの開発プロジェクトのように、目標、リソース(人員、材料)、予算、計画を明確にしてから、開発の実施段階に移る。どんな料理を作るかは、開発プロジェクトにおいて何を開発するかに相当する。そして、既にある食材から何らかの料理を作る場合は「シーズ主導」、食べたいものが先にあってそれに合わせて材料をそろえる場合は「ニーズ主導」である。実際には、既にある食材と食べたいものの両方を考慮しながら、決めるケースが多い。研究開発の現場も、そのようなケースが意外に多い。

 シーズ主導の場合は、今ある食材から何を作れるかの「発想力」が必要になる。また、シーズ主導でもニーズ主導でも、食材から料理をつくり上げていく「実行力」が必要となる。さらに、レシピ本や雑誌、ネットのレシピサイトなどで必要な食材や分量、作り方を調べる「調査力」、家族の好みや栄養バランスなどを考慮した料理に仕上げる「マッチング力」も必要だろう。

 作ろうとしている料理の「製品アーキテクチャ」は「すり合わせ型」と「モジュラー型」に分けられる。例えば、中華料理の回鍋肉については、必要な食材を購入して、洗う、切る、素材に合うように各種の調味料を使って味を調整する、いわゆるすり合わせ型の調理方法が1つとしてある。一方、回鍋肉の中華合わせ調味料を購入して、食材と合わせる「モジュラー型」の調理方法もある。料理の世界も、すり合わせ型が少なくなり、モジュール型への移行が進んでいる(料理のデジタル化)。

 食材、道具、調味料などの準備についても、「生産システム」の管理のように、必要なものが、必要な時に、必要な量だけ、入手できることが必要だ。そのため、調味料の並べ方、置き場所も考慮すべきだ。

 料理を完全に1人で作るか、それとも奥さんや子どもの協力を得て「チーム」で作るかも重要な選択肢である。作業の効率を上げるために、自前ではなく外部のリソースやアイデアを活用するのも有効な手段に違いない。

 調理には道具や調理家電が欠かせない。しかし、研究開発の設備投資と同様にその妥当性も問われる。例えば、人気のとり唐揚げの場合は、普通に油で揚げる方法があるが、ヘルシーさとスピードを重視すれば、油を使わないノンフライと言われる調理家電もある。揚げ物をたまに食べる程度ならば必要ないが、何年もの間、子どもの弁当向けに頻繁に揚げ物を作るとか、毎週食べるならば、投資対効果から購入した方がよいだろう。