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 日本の製造業はその高い品質により戦後から成長を続け、その版図を世界にまで広げてきた。しかし近年、品質や技術では高いレベルを持つはずの日本企業の苦戦が続いている。製品レベルや技術では決して負けていないはず、しかし事業としては負けてしまう…。その状況に対し、いま、顧客の求める「本質的な価値」「未来の価値」を探り、事業に活かす取り組みが始められている。
 本稿では、名古屋工業大学准教授の加藤雄一郎氏が提供する「『未来の顧客価値』を起点にしたコンセプト主導型の新製品・サービス開発手法-理想追求型QCストーリー」の骨子を紹介する。(日本科学技術連盟では、同講演会の開催を予定している)

 前回は、未来を起点としたバックキャスティングの思考アプローチに基づく「理想追求型QCストーリー」と呼ぶ新たな手法を、実際の製品開発事例を交えて紹介しました。私はこれを問題解決のための新たな手法としても位置付けています。今回は、従来の「問題解決」との比較を通して、理想追求型QCストーリーの新規性を考えてみます。

 「問題」とは、「現状」と「目標(あるべき姿)」のギャップとして定義されます。そして、両者のギャップを生む原因を特定し、対策を講じることを問題解決といいます(図1)。

図1 問題解決の基本的枠組み

 まず「現状」とは言葉のとおり、現在の状況です。問題解決に取り組む必要のある状況ですから、なんらかの不具合や目標未達成などが生じていると考えられます。

 そして「目標」とは、通常は所与のもの、前提として既にあるものとして存在しています。例えば、生産部門における不良率、営業部門における顧客訪問件数、開発部門における年間開発件数、コールセンターにおける受電率など、どの部門にも達成すべき目標というものが多かれ少なかれ存在します。

 これらの目標を達成できていない「現状」に着眼するところから始まるのが、従来の問題解決型のQCストーリーです。実際、問題解決型QCストーリーの教科書には「今の仕事のダメさ加減の定量的把握からスタートする」と書かれています。

 つまり、一般的な問題解決においては、目標が前提条件として初めから存在しているため、あとは現状を把握できれば、必然的に両者のギャップがどのように生じているか(問題は何か)を理解することができます。図1で言い換えれば、現状と目標、左右の距離(ギャップ=問題)をはかりたいときに、もし右側の目標の位置が初めから固定されているなら、後は左側の現状の位置さえ分かれば、両者の間の距離を測ることができる、すなわち何が問題なのかが分かる、ということです。だからこそ、問題解決型のQCストーリーでは、現状を起点に始まっているのです。

 これに対して理想追求型QCストーリーは「はじめに既存目標ありき」という立場ではなく、「真に達成すべき目標は何か」という目標起点の立場を取ります。本当に達成すべき目標が既存目標群には存在しない場合は、新たな目標を創造することになります。もちろん、検討の結果「既存目標の達成こそが重要だ」ということになれば、それはそれで良いのです。いずれにせよ、はじめから既存目標ありきではありません。起点は「現状」ではなく、「目標」なのです(図2)。

図2 「一般的な問題解決」と「理想追求型QCストーリー」の違い