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図1 ジャイロの振動系
図1 ジャイロの振動系
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 フランスの物理学者フーコー(Foucault)が、いわゆる「フーコー振子」を用いて地球の自転を証明したという話を聞いたことがあると思います。フーコーは、1851年にパリのパンテオン宮殿の天井から長さ67 m、質量27 kgの振り子を吊るし、錘(おもり)には重力しか働いていないのにその振動方向が回転することを示し、それが地球の自転によるものと説明しました。フーコー振子は、ゆっくりした地球の回転を測定できる高性能積分ジャイロであると言えます。

 最近、フーコー振子をチップ上で実現する研究が米国で進んでいます。そのデバイスは「Whole angle mode gyroscope(全角度モード・ジャイロ)」と呼ばれます。従来のMEMS(micro electro mechanical systems)ジャイロは角速度信号を出力しますので、回転角を得るにはその信号を積分しなくてはなりませんでした。しかし、角速度信号には比較的大きなバイアス不安定性が含まれるので、それ積分すると、みるみるうちに値が“飛んで行って”しまいます。こうしたバイアス安定性を向上させることがMEMSジャイロ研究の主要課題の1つですが、その方法については別の機会に説明したいと思います。

 一方、全角度モード・ジャイロは回転角を出力します。そして、うまく作れば、原理的に従来のものよりも桁違いに良い精度で回転角を測定できます。このことから、次世代の高性能MEMSジャイロの候補の1つとして全角度モード・ジャイロが研究されているのです。

 それでは、どのようにしてフーコー振子をMEMS技術によって実現するのでしょうか?

 従来のMEMSジャイロは、マス(m)をばねでx、y方向に支持して振動させます(図1)。全角度モード・ジャイロでもそれは同様なのですが、x、y方向の振動を完全に対称とし(周波数、振幅、およびQ値を同一にし)、かつ直交させます。直交とは幾何的に直角で交わっているということですが、振動形態によっては必ずしもそうではなく、むしろx、y方向の振動が完全に独立であること、と言った方が適切です。

 x、y方向の振動が独立しているということは、マスはx、y平面内で勝手に振動できるということですが、この系が回転すると様子が変わります。振動しているマスにコリオリ力が働き、その結果、x、y方向の振動が互いに影響、つまり連成します。このとき、マスは特定の振動のパターン(モード)示します。

 x、y方向の2自由度を有するこの系では、2つの回転モードが生じますが、これらのモードが特定の位相差で重なり合った振動は、直線振動になります。そして、その振動方向が系の回転に応じてデバイス上で回転します。まさにフーコー振子です(より詳しくは「技術者塾」の講座「車載センサーやIoTデバイスに革新をもたらすMEMS技術」〔2015年7月21日(火)〕で解説します)。

 デバイスを正確に作れば、マスの振動方向の回転角はデバイスの回転角に正確に比例しますので、高性能積分ジャイロができます。図2に、2015年6月21~25日に米国・アラスカ州・アンカレジで開催された国際会議Transducers 2015で発表された全角度モードMEMSジャイロを示します。

 さて、上でも述べましたが、高性能MEMSジャイロを実現するためには、とにかく正確に作ることが重要です。つまり、キーポイントの1つは製造技術です。MEMSジャイロの構造は、SiのDRIE(deep reactive ion etching)で作製しますが、加工されるSi構造体の側壁の垂直性が悪いと、MEMSジャイロの性能は大幅に悪くなります。DRIEをはじめとするMEMS製造技術で日本企業は強みを持っています。現時点では、ここに述べたような高性能MEMSジャイロの研究では日本は出遅れていますが、「ものづくり日本」に巻き返しのチャンスはあります。そのような高性能ジャイロが、自動運転だけではなく、ロボットやドローン、パーソナル・ナビゲーション・システムなど、さまざまな次世代ハイテク製品にも使われることは言うまでもありません。

図2 デュアル・フーコー振子ジャイロ(D. Senkal、 A. Efimovskaya and A. M. Shkel、 DUAL FOUCAULT PENDULUM GYROSCOPE、 Transducers 2015、 pp. 1219-1222から引用)
図2 デュアル・フーコー振子ジャイロ(D. Senkal、 A. Efimovskaya and A. M. Shkel、 DUAL FOUCAULT PENDULUM GYROSCOPE、 Transducers 2015、 pp. 1219-1222から引用)
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