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 我々が毎日食べている料理のレシピはどこから得たものなのか――。ふと考えると、なかなか簡単に答えられない気がする。先祖から引き継がれた“お袋の味”もあるが、テレビや雑誌など各種のメディアを通じて知ったものや、料理教室で料理研究家から紹介されたれもの、ネットで調べて得られたものもある。改めて考えてみると、実にさまざまな形で入手している。それに加えて、最近登場してきたのが「Chef Watson」というレシピを編み出すコンピューターシステムだ。今後は、こうしたコンピューターシステムが提案したレシピを利用する可能性が出てきている。今回はChef Watsonと、料理研究家に代表される人間のレシピ作りについて考察してみる。

料理研究家とレシピ作り

書店のレシピコナー
書店のレシピコナー

 テレビや新聞、雑誌では、毎日のように料理関連の番組や記事が取り上げられている。そこでは、栄養があったり、実用的だったり、便利だったり、簡単だったりと、さまざまなレシピが紹介されている。中でも57年という歴史を持つのが日本放送協会(NHK)の「きょうの料理」である。筆者は、来日したての最初の数年間、よく同番組を観ていた。当時は聞き取れない日本語が多かったが、その番組では食材と分量が字幕で示されるので、日本語の勉強にとても役立った。同時に日本の家庭料理も少し知ることができた。近年、あまり観ていないが、先日偶然その番組を観る機会があり、とても懐かしかった。

 このようなテレビ番組や雑誌記事の協力者には、料理店のシェフもいるが、多くは料理研究家だ。料理研究家とは、料理を研究して家庭料理のレシピを開発する人であり、料理店で実際に客に出す料理を作るシェフとは一線を画する。料理研究家が開発したさまざまな新レシピは、こうした番組や記事などを通じて我々の食卓へ届けられる。

 なぜ、日本にはこんなに多くの料理研究家が存在しているのか――。実は、そこには社会・経済の発展・変化が密に関連している。日本では、台所が機能的になり、食材が豊富になり、調理家電が増えた。経済の発展が外食や海外旅行を後押しし、そこで食べたものを家でも食べたいという願望が芽生える。そして、それに伴って増えてきたのが、献立の悩みであり、その一助としてテレビの料理番組や料理雑誌が生まれ、料理研究家が誕生した。

 活躍している料理研究家たちは、家庭料理、伝統料理、郷土料理、弁当のための料理、時短料理などそれぞれに自分の得意分野を持っている。さらに、和食、フランス料理、イタリア料理、中華料理などの専門分野に分かれていることも多い。新しいレシピを考案する際には、既存レシピをベースに足し算や引き算、入れ替えなどの様々な試行錯誤を行い、目指すものをつくり上げていくケースが多いという。また、和、中、洋というような枠にとらわれず、一般的には合わないと思われている食材でも組み合わせてみるというような自由の発想を持つことも、成功している料理研究家に見られる特徴の一つだ。いつも作っている料理でも材料をほんの少しだけ変えてみる。あるいは、食材を入れる順番や調味料を変えてみる。そうしたちょっとした工夫で料理は違ったものになる。そこには、日本人の細やかさや、おいしさを追求する職人精神も垣間見られる。