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目先の利害やしがらみに偏ることなかれ

イラスト:ニシハラダイタロウ
イラスト:ニシハラダイタロウ
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 詳細は省くが、この助言は金言であった。予想はしなかったが、言われれば、まさにおっしゃる通り。そこに気が付かなかっただけのことであった。確かに、部材の取り付け精度が重要なのに、そこに至らず、加工精度が上がらないのは、機械装置のせいにしていただけだったのである。

 “一件、落着ぅ~。皆の者、おもてを上げぇ~” そんな声が聞こえるようだった。そう、あの江戸時代の町奉行、大岡忠助(おおおか・ただすけ)がさっそうと裁定を下した後に発したと言われる、あの声が聞こえたような気がした。そして、そこにいる誰もが穏やかな顔になっていた。

 そして私も、何とも言えない満ち足りた感じがした。が、ちょっと待て。これでは、B社のビジネスは、指先ほどにも無いではないか。機械装置はもちろん、何の売り上げにもならないではないか。

 たったの一言で済んでしまったのであるから、何と言ったらいいのだろうか。A社長も「どうやってお礼をしたらいいのでしょうか」と言うのが精一杯である。

 笑いながらB社長、「要りませんよ。だって、それで済んだ話ですからね。これをご縁に、これからもお付き合いしてくれたら、そのうちにビジネスの話にもなるでしょうから、その時はどうぞ宜しくお願いします」と言うのである。

 いかがだろうか、開発にも大岡裁きがある。物事の理非を一瞬に見抜き、その本質を解き明かし、直球ど真ん中の答えを出す、まさに大岡裁きがあるのである。

 41歳の若さで江戸の花形奉行といわれる町奉行に抜擢され、裁断公正、名判官と称せられた大岡忠助の大岡裁き。それは何も時代劇や映画の話だけではない。

 現代の開発においても、目先の利害やしがらみに偏ることなく、理非を明らかにして即断即決する大岡裁きこそ、今、最も求められているのではあるまいか。

 デン、デン、デ、デ、デ、デ、デ~ン! これは、奉行が退席するときの、太鼓の音である。(笑)

開発の鉄人”ことシステム・インテグレーション 代表取締役の多喜義彦氏は、これまでに3000件の開発テーマの支援に携わり、現在も40社以上の技術顧問などを務めている(システム・インテグレーションの詳細はこちら)。「リアル開発会議」では、多喜氏を指南役に、オープンイノベーション型の新事業開発プロジェクトを開始する(詳細はこちら)。