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 東芝の不適切会計問題は、2015年7月21日に第三者委員会から最終報告書が公表されたことで、全貌がかなり明らかになってきた(発表資料「第三者委員会による調査報告書の受領と今後の当社の対応について」)。その内容を踏まえて、今回はパソコン事業における部品の取引を取り上げたい。問題となったのは、部品の有償支給という取引だ。

 前回の「東芝不適切会計の発端となった、見積もり頼りの工事進行基準」で取り上げた工事進行基準は、会社の見積りに依拠する部分が多いため、明らかにクロとは言い切れない部分がある。しかし、今回取り上げる部品の有償支給に関する取引は、第三者委員会報告書を見る限り、非常に悪質性が高い。

部品の管理責任を明確にする有償支給

 大手製造業では、製造の全てを自社で行うことはせず、製造の一部またはほとんどを外注することが多い。その場合、部品は大手製造業がまとめて調達したものを外注先に支給することがある。大手製造業が調達した方が、規模が小さく上場もしていない外注先企業が個別に調達するよりも有利な条件で調達できるからだ。

 部品を外注先企業に支給するやり方には、無償支給と有償支給がある。

 このうち無償支給とは、外注先企業に対して部品を無償で引き渡す方法である。この場合、部品の所有権は支給元にある。したがって、使用せずに残った部品は、支給元である大手製造業者が在庫(棚卸資産)として計上する。外注先企業は組み立てなどの作業に要した工賃だけを支給元に請求する。

 一方、有償支給とは、外注先企業に対して部品を有償で引き渡す方法である。実質的には、部品をいったん販売することになる。この場合、部品の所有権は外注先企業に移転する。したがって、使用せずに残った部品は外注先企業の在庫(棚卸資産)として計上される。完成品は支給元の製造業者が外注先から買い戻す。すなわち、単なる工賃の計上ではなく、完成品の売買として処理される。

 外注先に組み立てなどの作業をお願いし、それに対して工賃を支払うという取引実態に即して考えれば、無償支給の方が自然なやり方だ。しかし、無償支給した部品は社外在庫となるため、支給元の製造業者が在庫量を把握するのが難しくなる。また、外注先で紛失や無駄遣いがあった場合、その責任が曖昧(あいまい)になりやすい。

 このような問題を解決するために有償支給という方法が採られている。有償支給にすれば、部品の所有権は外注先に移るため、部品の管理責任を明確にすることができるのである。