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中途半端な光ディスク


 光ディスクの特徴は、原理的に記録メディアの耐久性(長期保存性能)が高いことです。加えて、経済的で利便性も高い。そのような理由から、HDDと並んで、個人向けのアーカイブ用途で利用されてきました。

 ところが、冒頭の太陽誘電のニュースのように、光ディスク業界は元気がなく、アーカイブ用途でもまだ目立った成果を挙げられていません。

 その一因は、アーカイブ用途としては、「帯に短したすきに長し」、つまり中途半端ということだと思っています。HDDとほぼ同等のビット単価か、少し安いくらいなのですが、磁気テープほどビット単価は安くありません。利便性も、磁気テープよりも高いですが、HDDほどではない。加えて、前述した長期保存性に優れるという点も、その点に不信感が増すできごとがありました。

 例えばDVD(DVD-R)は登場し始めた1990年代後半、その長期保存性について、「条件によっては100年以上もつが、標準的な状態では数十年」といった話が喧伝されていました。しかし、このときはきちんとした評価法がなく、光ディスクメーカーがそれぞれ独自の基準でアピールしていました。しかも、すべてのDVDが数十年間データを保存できる、という誤解が生じました。

 2008年に国際標準として承認された、光ディスクの寿命推定試験法規格「ISO/IEC 10995」を満たす「長期保存用DVD-R」でも、保証するのは30年です。一般的なDVDにいたっては、10年ほどでしょう。30年や10年という期間は、HDDや磁気テープに比べたら十分長いのですが、登場当初と最近の保証期間に違いがあることなどが、ユーザーにとって、不信感として残っているのではないでしょうか。

 またCDからDVD、Blu-ray Discと、規格の更新が早かったことも、不信感が募ったようです。本来は下位互換性が高く、30年前のCDに記録したデータを今でも読めるにもかかわらず、です。企業向けのアーカイブ装置で光ディスクを利用しているものがありますが、現状では普及しているとは言いがたい状況です。

 このように、アーカイブ用途において、企業向けでは経済性が優先されて磁気テープが、個人用途では利便性が優先されてHDDが主役になっています。

 アーカイブ用途であれば、本来ならば「永続性」が最も重要な要素になるので光ディスクが主役になりそうです。しかし、利便性と経済性が優先されて、光ディスクはアーカイブ用途の主役にはなっていません。