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 いつもは谷島が文章を書き仲森がイラストを書いている。けど、今回は逆の布陣で臨んでみたい。最近、仲森がいくつかの商品に感動し、それをほかの誰かに伝えずにおれない心境になったためである。そのうえ、タイトルのような賞まででっちあげてしまった。2004年度と冠したのは「たまたまそんなタイミングなので」というご愛嬌である。笑って許していただきたい。

 重ねて言い訳する。「ヒット商品」としなかったのは、「売れてそうだけど本当のところはわからない」からである。趣旨もちょっと違う。売れていることより感動的であることを重視した。ただ、私が日経ビズテックという雑誌をやっているせいもあり、最近は感動すると「スゴイ」と言わずに「こりゃイノベーションだわ」と言ってしまう。一種の職業病だが、とりあえずこれを賞の名前にしてみた。ただ、「そんなものに感動しているのはお前だけだろ」とか言われると困るので、機先を制して「私的」と付けた。これで備えは完璧だと思う。

ただの怪しいテープだった


 そろそろ本題に入りたい。今回は三つの商品が入賞した(と言っても、何も出ません。恐縮です)。「キズパワーパッド」、「ダイソン」そして「アメーラ」である。

 まず、「キズパワーパッド」。実は年頭に社内で引越しがあった。その作業中、指を負傷してしまい、血がドバーっと出た。それを見た弊誌副編集長の小林暢子が「大変大変、これこれ」と言ってくれたのがキズパワーパットだったのである。あわてて袋を破ると、出てきたのはなんだかネッチリした分厚いテープ。バンドエイドのような殺菌ガーゼ片もついてなくて何だか頼りなかったのだが、「とりあえず傷口をふさぐ効果は高そうだ」ということで貼ってみた。

 出血も止まり一安心。さすが弊誌の副編集長ともなるとリスクマネージメントがしっかりしていると感心して聞いてみると、記者発表会でもらったもので、一度も使ったことはないという。不安になってネットで調べてみると、キズが3倍の速度で治るとうたっているではないか。ウソだろう。「こんなことを堂々と書いていいのか、JAROは何をしているんだ」と憤慨したのだが、本当にものすごく早く直ってしまい、激しく感動した。小林さんありがとうございました。

灰色の怪しい火山灰だった


 次は掃除機の「ダイソン」。ダイソン氏に寄稿をお願いしたこともあり、家の掃除機が老朽化していたこともあり、ダイソンの掃除機を買うことにした。一応、見たことはあったのだが家にブツが到着し組み立ててみると、相当に奇抜な物体である。ついつい吸い口を中空に向け「ゴーストバスターズ!」と叫んでしまう。それで私の出番は終わり。あとは奥様に託し試用してもらう。

 すると、ものすごい量のゴミが取れた。量もさることながら、そのゴミのコンテンツが通常と著しく異なるのである。見慣れた毛髪や綿ぼこりのようなものもあるにはあるが、大半は灰色の火山灰状の粉なのだ。「なんじゃこりゃ」と思い、一足先にダイソンを買った小林に聞いてみた。「そうそう、うちでも話題になったんですよ。あれ何なんでしょう。聴いてみますか」ということで、同社の広報に電話してみたら、「よくある質問なんです」ということで、あっけなく判明した。人の皮膚だったのである。

 人間の皮膚はどんどん新しくできているわけで、古い皮膚は老朽化し剥離する。もちろん風呂で「アカ」としても落としているのだが、日常生活の最中でもどんどん落ちる。これが絨毯の中などに入ると普通の掃除機では取れないらしく、ダイソンを使うと一気にそれが吸い取られてしまうようなのだ。しかもその火山灰は、ダニくんの好物であるらしい。ああ、ダイソンを買ってよかった、これで救われたと、心から思った。

小さな怪しいトマトだった


イラスト◎片山カナル(谷島が絵を描けないため代理)

 最後はアメーラ。たぶん、あまり知られていないと思うのだが、トマトの名前である。1年くらい前、「カノビアーノ」というイタリアンレストラン(本店は代官山ですが私が行ったのは京都店です)に行ってカプレーゼを食べてものすごく感動した。モッツァレラチーズもうまいのだが(水牛の乳で作ったものでないとダメです)、トマトがうまい。硬くて肉厚で、とにかく甘いのである。

 その感動を再現してくれるトマトがアメーラだった(カノビアーノがこれを使っているかどうかは不明)。近所の妻の実家で食事をしている際に、ピンポン玉大の小さくて貧相なトマトが出てきた。何でも、トマトとしては恐ろしく高い値段だったので買ってみたのだという。その購入動機にも感動したが、何よりその甘さと食感に感動し、一度に4個も食べてしまった。

 そして、「また買って」とねだったのだが、いつも入荷するものではないらしい。あせって自転車を飛ばし、近所の青果物店とかグルメ系スーパーなどを端から荒らしていったのだが、アメーラは見当たらない。こうなれば、ということでネット検索し、産地である静岡県の青果物店から取り寄せることにした。いい歳になって、たかがトマトのことでこれだけムキになったのだからよっぽどのことなのだと、自分ながらに分析している。

分かりやすいのが何より


 以上、受賞理由を説明してきた。改めて三つを並べてみて感心するのは、トマトとか掃除機とか絆創膏とか、いかにも成熟した商品分野にあっても、これだけ「従来商品との際立った差」が打ち出せているということだ。

 だが、その差は「使って(食べて)みなけりゃわからない」もの。ところが、受賞三作は、いずれも使う(食べる)前から際立って怪しいのである。ダイソンの例でいえば、まず、見てくれが競合する日本ブランドの掃除機とぜんぜん違う。価格も飛び抜けて高い。しかも、本来が隠してしまいたくなるゴミの内容物が見えるように、ゴミ収容部が露出していて、なおかつ透明なのである。一言でいえば、「分かりやすい」ということだ。

 「分かりやすい」で急に思い出したのだが、以前から疑念を抱いていることがある。女性の間で絶大な人気を誇る「あぶらとり紙」は本当にたくさん脂が取れているのか、という問題だ。確かに、あの紙で鼻の周りなんかを拭くと白い紙が半透明になる。あまりに分かりやすいので「おー取れてる取れてる」とか思ってしまうのだが、頭の片隅では「あの紙は微量の脂を吸うだけで透明になる紙なのではないか」と考えてしまうのである。ひょっとしたら、分かりやすいだけで、脂を取る力はティッシュと変わらないのではないかと。どなたか真実をご存知でしたらお教えください。

●コラム名を「さよなら技術馬鹿」とした理由(トップ・ページへ)