PR
 大見忠弘氏と中村修二氏とは「共振」する。この事実に気付いたのは4月26日のことであった。

 両氏の名前をTech-On!読者の皆様は勿論ご存じだろう。半導体の権威である大見忠弘氏は現在、東北大学の客員教授であり、日本メーカー25社を集めて大型液晶パネルを開発するプロジェクトの責任者を務めている。一方、中村修二氏は米カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授にして、高輝度青色発光ダイオードの開発者である。

 4月26日の正午、大見・中村両教授と一緒に幕の内弁当を食べる機会に恵まれた。両教授は仲良く並んでお弁当を食べ、あれこれと話していたが、片方が何か刺激的なことを言うと、もう片方がそれを受けてより強い発言をする。また片方がさらに過激な発言をする、といった具合で、変な表現だが、迫力ある昼食会になった。

 両教授のやりとりを聞いていて筆者の頭をよぎったのが「共振」という一語であった。ここでちょっと横道にそれるが、今回のコラムを書くにあたって「共振」という言葉を広辞苑で引いてみた。「共鳴に同じ。特に電気振動の共鳴をいうことが多い」と出ていた。そこで一度は題名を「共鳴」に書き直した。

 ちなみに広辞苑によると、共鳴については「物理系が外部からの刺激で固有振動を始めること。特に刺激が固有振動数に近い振動数を持つ場合を指す」とあった。よく見るとその次に「転じて、他人の思想や意見に同感の念を起こすこと」と書かれていた。「大見・中村両教授が共鳴している」と書いてもあまり目を引かない。そこで当初の通り、共振に戻した次第である。

大見・中村両教授がMOTを語る


 話を戻す。なぜ筆者が両教授と一緒に弁当を食べられたかというと、筆者が関わっている日経ビズテックが主催した講演会の講師としてお二方に来て頂いたからである。講演会のトップバッターが中村教授、その次が大見教授という順番であった。

 この講演会は、日経ビズテックに掲載した寄稿論文の中から、読者の評価が高かったものについて、寄稿者の方に論文の主旨を生でお話頂こうというものであった。お二人の寄稿は日経ビズテックの船出号に掲載した。題名は中村教授が「中村修二的MOT人論」、大見教授が「事業化されない論文はただの紙切れだ」である。

 講演会当日の朝、控え室で中村教授に挨拶した。また脱線するが、正確に言うと挨拶ではなく、謝った。本欄の第一回目で書いたように、筆者は今年1月に中村氏と一緒にラーメンを食べた。ラーメンを食べお茶を飲んでいるとき、中村教授にあることを約束したが、筆者は4月26日までにその約束を果たせなかった。

 「やる気はあったのですが間に合いませんでした。面目ない」と言うと、中村教授は独特の口調で「しょーがないでしょう。記者の人はみんな忙しいから。谷島さんが約束したことをやったマスコミの人はいままでだーれもいませんから。どうせやらないんです」と答えた。こう言われて「はい、そうです」と引き下がっては記者の名折れである。「今年は記者になって21年目の節目であり、必ず必ず約束は守ります」とよく分からないことを言ったところ、中村教授は「ほーそーですか。無理しないでくださいよ、無理はいけません。うーん、でも頑張れば二、三日ですーっとできますよ」と言ってくれた。子細はまだ書けないが、本件がどうなったかについてはおって報告したい。

「中村さんの話を聞きに来た」と大見教授


 中村教授とそんなやりとりをしていると、大見教授が控え室に現れた。二人は面識があったらしく「やあやあ」という感じで挨拶した。大見教授は「今日は中村さんの講演をじっくり聞かせてもらおうと思ってやってきました」と言った。中村教授は「いやー私の話なんか...」としきりに照れていた。

 講演会が始まった。中村教授の講演の骨子は「どうしても売れるものを開発したかった。そのためにテーマを自分で選んだ」というものだ。講演の基となった寄稿の「中村修二的MOT人論」でいうところのMOT人とは「研究開発製造品質管理営業販売クレーム処理」まで、全体が分かる人ということである。

 大見教授は最前列の予約席に座り、中村教授の話を聞いていた。大見教授の番になるとそのまま登壇し「中村さんの話を『その通り』と思って聞いていた。これほど考えが同じだとは知らなかった。皆さんには同じ話をすることになるが聞いて頂きたい」と言って講演を始めた。

 パソコンを使わず、独特の節回しを聞かせた中村教授に対し、大見氏はかなり膨大なプレゼンテーション資料を使って話をされた。データを示しつつ、ロジカルに語っていく講演で、来場者は聞き入っていた。講演会に先立って大見氏から、講演資料が送られてきたとき、日経ビズテックの小林副編集長は「もの凄い量あるんですけど、1時間で話せるのかしら」とつぶやいていたが、大見教授は時間通りに講演を終えた。この間、中村教授も前のほうの席でずっと聞いていた。

「税金を無駄遣いした人に厳罰を」


イラスト◎仲森智博
 講演終了後の質疑応答で大見節が出た。「人の金を使ったら責任をとる、この当たり前のことが分かっている人に研究費を渡すべき。税金を使っておきながら成果を出せなかった研究者から予算申請の権限を剥奪せよ。政治家が5億円もらってぶちこまれるなら、何百億も使って成果を出さずケロッとしている奴は死刑」。

 講演が終わり、両教授は控え室に戻った。ここで冒頭の幕の内弁当を食べるシーンに戻る。「食事をしながら仕事の話をする奴は野暮」という言葉があるが、せっかくの機会なので「日本はどうしたらよいのでしょうか」と水を向けてみた。

 質疑応答の直後であったせいか、大見教授は「意思決定に尽きる。自分で決めて自分で責任をとることが何より大事。物事をよく分かっていない人は決めてはいかん。決められないなら、決めるポジションから外れよ」と迫力ある口調で言い切った。間髪入れず中村教授が「多数決はダメですよ。米国には大見先生みたいに自分で決めちゃう人がうじゃうじゃいます。経営者もベンチャーキャピタリストも、よーく分かった上で、『私が全部決める』って言いますよ」と合いの手を入れる。こんな感じで二人の発言は講演後、さらに盛り上がっていった。

 個人的に一番面白く聞いたやりとりを再録しておく。お弁当の後、お茶を飲んでいた大見教授が突然、しみじみした口調でこう言った。「私も60歳をとうに過ぎましたからね(注・大見教授は1939年生まれ)。年をとると意外にいいことがあると最近分かりました。プロジェクトを進めるときに、私が会う人はほとんど年下なんですよ。すると強いことを言っても結構皆さん、聞いてくれるのですな。50代前半のころに同じことを言うと『あの生意気な教授は何だ』と言われたものですが。中村さん、あなたいくつ?50を超えたとこですか(注・中村教授は1954年生まれ)。もう少し、年とったら日本ではやりやすくなりますよ」

 中村教授は「そーですかー。そういうものですかー」と答えていた。この話題に関してだけは、あまり共振しなかったようである。

■技術経営メールのご案内
技術経営戦略誌「日経ビズテック」は、イノベーション(新製品/新事業開発)に取り組むリーダーに向けた電子メール配信サービスを実施しています。テクノロジーを生かしてビジネスを創造するためのヒントを毎週火曜日にお届けします。内容やお申し込みについてはこちらをご覧下さい。

●コラム名を「さよなら技術馬鹿」とした理由(トップ・ページへ)