PR
図1◎ステップワゴン・フロントビュー
図1◎ステップワゴン・フロントビュー
[画像のクリックで拡大表示]
図2◎ステップワゴン・インパネ
図2◎ステップワゴン・インパネ
[画像のクリックで拡大表示]
図3◎セレナ・フロントビュー
図3◎セレナ・フロントビュー
[画像のクリックで拡大表示]
図4◎セレナ・インパネ
図4◎セレナ・インパネ
[画像のクリックで拡大表示]

 ホンダと日産自動車の5ナンバーミニバン「ステップワゴン」と「セレナ」が、2005年5月末に相次いでフルモデルチェンジした。興味深いのが、ステップワゴンが車高を下げてきたのに対し、セレナは逆に旧型より車高を高くした点だ。

 ホンダは、ミニバンユーザーの使い方が変化してきたと読む。ミニバン特有の運転席から後席までのフラットフロアや、広々とした室内空間の使い勝手の良さがこれまで重宝されてきたが、必要以上に大きな箱型車体は、かえって日常的にもてあますのがわかってきたという。

 対して日産は、開発責任者自身が少年野球チームの監督を務めるというだけあって、週末にお父さんが活躍できるかつてのワンボックスカー的な便利さに注目した。もちろん、だからといってウィークデーに足として使うお母さんの運転しやすさをないがしろにしたわけではない。さらに子供が友だちに自慢できるクルマでもあるという、ある種欲張りな要求を満たすため、旧型より背のある車高による高さを持った室内空間や、多彩なシートアレンジの実現に力が注がれた。

 両車の違いは、走りに如実に現れている。ステップワゴンは、セダンのような安定した走りになった。走行中のクルマの動きがまるでセダンなのである。室内は従来と同等の高さを保ったまま、60ミリ低床化した。この結果、車体の高さは75mm、重心は40mm下がったという。とはいえ、着座位置は20ミリ下がっただけなので、いわゆるミニバンらしい視界はそのままと感じる。不思議な運転感覚のクルマだ。

 このセダンのような走りは、3列目シートでの乗り心地に最も効果を発揮する。加減速やカーブでのロールに対して動きの収まりがよく、しっかりと安定しているため、クルマ酔いを起こさずに済む。その安定した走り味によって、3列目の快適性も悪くないと感じられる。

 セレナは、外観デザインでも室内を広く見せようと、ガラス面積を大きくとっている。鉄板より重いガラスが多用されたことで、背の高さに加え車体の重心も高くなっているはずだ。結果、わずかだが走行中クルマがいつも左右に振れており、その揺れの抑えが利いていないようにも感じる。そうした影響が3列目の乗り心地にも出て、加減速のピッチングや、コーナリングでのロールといったクルマの動きよって起こる揺れが収まりにくく、私自身、クルマ酔いを起こしてしまった。

 エンジンは、ステップワゴンが排気量2.0Lと2.4Lの直列4気筒。2.0Lには4速自動変速機、2.4LにはCVTという組み合わせだ。セレナのエンジンは2.0L直列・4気筒1本で、これにCVTが組み合わされる。

 ステップワゴンの2.0Lエンジンは、市街地や高速でまずまずの加速が得られ、不満は少ない。個人的には2.0Lエンジンで十分と感じた。ただ、上り坂になると2.4Lのトルクのゆとりにはかなわない。

 セレナはCVTであるのに静粛性に優れる。この点はとても好ましい。しかし、試乗会場が高原地帯で、知らぬ間に道が上り下りをしているせいだろう、エンジントルクにやや不足の印象が残り、とくに3000rpmあたりで走り続ける状況では、もう少しトルクフルであってほしいと思わせる。

 CVTは効率がいいが、車体の重くなる傾向にあるミニバンを元気に走らせるには、通常の自動変速機より重くなるユニットの重量増加分が、ボディブローのように加速性能にきいてくるのではないだろうか。この点ステップワゴンは、コスト面で2.0Lエンジンには4速自動変速機を選択したのだが、結果的に重量とのバランスがとれており、一方、CVTには2.4Lエンジンを適用したのが動力性能的には正解となっている。

 背の低くなったステップワゴンではあるが、逆に前が見えすぎるとあるジャーナリストの指摘があるほど前方視界はいい。また右折左折ともに、死角がほとんどない。現行のオデッセイに横断歩道で轢かれそうになった経験を持つ私としては、前方視界の確保は重要なチェックポイントとなっている。

 セレナでも、市街地で左折の巻き込み事故防止のため、三角窓のうまい使い方によって左斜め前方の視界は相当にいい。だが、右折時に必要な右斜め前方の視界は、ドアミラーのステーを隠すカバーによって大きくさえぎられ、とても見にくい。日産は、シミュレーションで前方視界の良さを公表しているが、これを詳細に検分すれば、やはり右斜め前方の視界が損なわれているのがわかる。

 安全運転に関わる視線の移動という点で、ホンダが新たに採用したフロントウィンドー下端に配置したデジタルワイドメーターは、速度の確認には問題はないが、エアコンの温度調整をしようとすると助手席側へ視線を移さなければならない。ある私の友人は、助手席に座る人がエアコンの温度調整をすることが多いからそれには便利だと言っていたが、1人で運転しているときには前方不注意となる時間が長くなるのは避けられない。また、チルトステアリングで高さ調節ができるとはいえ、このデジタルワイドメーターが見えないというドライビングポジションのドライバーもいた。

 アイディアが斬新なのは歓迎すべきことだが、日本の自動車メーカーはどこか安全に対する認識の甘さがあるといわざるを得ない。規則があるから衝突実験をする、規則があるから排ガスをきれいにする、そうした姿勢が全般に見受けられがちだ。

 さて、こうして試乗の結果をリポートしてくると、全般的にはどうもセレナの分が悪い印象を読者に与えたかもしれない。だが、これだけ趣旨の異なるミニバンが5ナンバーサイズのクラスに登場したことは、消費者の選択肢が広がったと歓迎すべきであり、セレナの動力性能や操縦安定性に十分満足する人も多いだろう。また、ステップワゴンは、よりステーションワゴンに近い位置にあるミニバンとして、登場を待っていた消費者もいるに違いない。そういう意味で、それぞれに興味深く、しかも5ナンバークラスという多くの人にとって身近なミニバンの誕生といえる。