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 「ISSCC 2013」の「低電力デジタル」は、例年同様2セッションで構成される。セッション9では、急速なスマートフォンの普及に伴い、ソーシャル・ネットワーキングの利便性や仕事・家事の効率化などをさらに追求した高機能なスマートフォン・アプリの要求性能に対し、エネルギーの高効率化と小面積化を実現したモバイルSoCやアプリケーション・プロセサ、物体認識技術やコンピュテーショナル・フォトグラフィ技術に特化したアクセラレータなどの発表が目白押しだ。

 韓国Samsung Electronics社からは2件の発表がある。1件目は、28nm世代のhigh-k/メタル・ゲートCMOSプロセスで製造した1.8GHzハイスペック・クアッドコアCPUと、その電力の1/6の1.2GHzロースペック・クアッドコアCPUとのヘテロジニアス構成によって、高性能化と低消費電力化の両立を可能にしたアプリケーション・プロセサの発表である[講演番号9.1]。

 もう1件は、32nm世代のhigh-k/メタル・ゲートCMOSローパワー・プロセスで製造した72.5GFLOPSのGPGPUである[9.4]。GPUの他、1.7GHz動作のARM v7AアーキテクチャのデュアルコアCPU、240Mピクセル/秒の画像処理プロセサ、60fps、1080pのMFC、バンド幅12.8Gバイト/秒のメモリ・サブシステムなどで構成し、融合マルチメディアのアプリケーションでは、CPUのみを使用する場合に比べて10倍のエネルギー効率を達成できるとしている。

 ルネサス エレクトロニクスからは、28nm世代のhigh-k/メタル・ゲートCMOSプロセスで製造したLTE/HSPA+対応のベースバンドと1.5GHz動作のデュアルコアCPU搭載アプリケーション・プロセサの統合チップが発表される[9.2]。45nm世代プロセスで製造する場合に比べて、48%のチップ・サイズを実現し、さまざまなパワー・マネージメント技術により、同社従来比で57%の低消費電力化と25%の速度向上を実現している。

 セッション24では、バッテリーレス、エネルギー・ハーベスティングで動作可能なスマートRFIDタグや、ウェラブル・デバイスを実現する上で重要な極低電圧動作技術に関して、注目すべき発表が多数ある。これは、実現間近なスマートタウン構想において、センサ・ネットワークやe-ヘルスなどのアプリケーション・ビジネス需要が大きく後押ししているからである。2013年は、革新的な電源・基板バイアス制御、共振クロックなどの技術をLDPCデコーダ、バイオメディカル・プロセサ、FIRフィルタのような実際のアプリケーションに適用したmW以下のチップの発表がある。

 中でも、米Texas Instruments社からは、電源0Vの状態からわずか400ns以下の起動時間を実現できる0.13μm世代FRAMプロセスのCortex-M0 MCUが発表される[24.7]。不揮発性メモリにプロセサの状態を格納することも可能だが、それには大きなエネルギーのオーバーヘッドと大幅な起動時間が必要となる。その課題を解決できる糸口として興味深い内容である。

 台湾National Chung Cheng Universityは、直列接続したMOSを電源遮断スイッチに用い、リーク電力を大幅にカットした技術を発表する[24.4]。0.13μm世代CMOS、0.3V、5MHzでエネルギー消費は0.29fJ/Cycle/Gateを達成し、従来よりも23.4%削減し、スタンバイ電力も55.1%まで削減している。

 東京大学などは、従来の共振クロック技術では周波数帯域が狭く電源電圧値に応じた周波数設定ができない課題を克服する断続的な共振クロック技術を提案する[24.9]。40nm世代CMOS技術で実現した0.37V動作の32ビット加算器で、980kHz動作時に従来の36%までクロック電力を削減し、リーク電流は81%まで削減している。