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図1●NECのポスター発表 Tech-On!が撮影。
図1●NECのポスター発表 Tech-On!が撮影。
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図2●R波近辺のサンプリングを密に NECのスライド。
図2●R波近辺のサンプリングを密に NECのスライド。
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図3●今回の手法の効果 上のグラフは単純な適用型手法、下のグラフはNEC提案の手法。NECのスライド。
図3●今回の手法の効果 上のグラフは単純な適用型手法、下のグラフはNEC提案の手法。NECのスライド。
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図4●消費電力の削減効果 左端は今回の手法。右の3つではサンプリング間隔の最適化を行っておらず、基本的に測定回路は常時オンである。NECのスライド。
図4●消費電力の削減効果 左端は今回の手法。右の3つではサンプリング間隔の最適化を行っておらず、基本的に測定回路は常時オンである。NECのスライド。
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 米国テキサス州Austinで開催中(2013年6月7日まで)の50th Design Automation Conference(2013 DAC)の初日には、恒例のDACワークショップが複数行われた。今回のDACでは、50回を機にいくつか新しい試みが始まったが、DACワークショップにも新顔があった。

 例えば、Workshop on Modeling of Biological Systems(MoBS'13)は、今年が第1回目だ。生体システムのモデリングに関するワークショップで、優れたモデリング技術を医用電子機器などの設計最適化につなげることを目指す。そのワークショップのポスターセッションでNECが発表した(図1)。タイトルは「Adaptive Sensing of Cardiac Signals with the Help of R-R Interval Prediction」である。

 NECは24時間など、長い時間、心電計を装着するケースに向けた技術を開発した。病院で短時間の心電図を取っただけでは十分でなかった場合、24時間分を計測・記録する携帯型の心電計を装着することになる。

 装着する人の負荷を下げるためには、長時間稼働し、かつ小型の装置が望まれる。そのためには、測定装置の低消費電力化は欠かせない。携帯型の心電計は、人に張り付けたプローブ側の装置と、そこで拾ったデータを貯めておく本体(最近は、スマートフォンなどの携帯型機器の場合もある)からなることが多い。今回のNECの技術は主にプローブ側の技術である。

測定間隔を最適化

 プローブ側ではある間隔を置いて測定し、それを無線で本体に送る。この処理における低電力化を狙った技術を今回発表した。そのポイントの一つは精度を下げずに、測定する(サンプリングする)間隔をいかに広げるかである。

 NECによれば、サンプリング間隔を最適化する手法として、Feizi,氏、Angelopoulos氏、Goyal氏、Medard氏が2011年に発表した「Energy-Efficient Time-Stampless Adaptive Nonuniform Sampling」があるという。この手法では、波形の傾きを見て、サンプリング間隔を調整する(いわゆる適応型)。すなわち、傾きがゆるければ、サンプリング間隔を広げるというものである。

 ただし、この手法では、心電計測で重要なR波をうまく捉えられないことがあると、NECはいう。R波は左心室の動きを表すもので、心不全などを診る際には重要な指標とされる。そこで、今回、NECはFeizi,氏らの適応型手法を改良した。すなわち、R波のように急峻に立ち上がる波形の立ち上がりを見逃さないために、立ち上がりそうな時間を予測して、その時間が来ると、サンプリング間隔を詰めるようにした(図2)。

 上述した単純な適応型手法に比べて、サンプリング・ポイント(すなわち、消費電力)は少し増えるものの、R波形をとらえることに失敗する確率は大きく下がるとNECはいう。その効果は、サンプリング間隔が長いほど、大きい。例えば、サンプリング間隔を3倍に広げると、単純な適応型手法では、サンプリングなしの連続的な波形計測と比較すると、全体波形の歪率が10%となりR波の見逃しが多数出ていた。今回の手法では、同歪率が8%に下がり、R波の見逃しがほぼなくなること確認した(図3)。

複雑なデータ圧縮は逆効果

 NECは今回、低消費電力化で別の指摘も行っている。送信時のデータ圧縮に関する指摘である。「データ通信の低消費電力化というと、送信データ量を減らそうと、データ圧縮技術を適用しがちだ。しかし、圧縮のための電力を消費するので、適用前にその検討をすべき」(NEC)とした。

 NECの検討によれば、今回のようにセンサーで捕捉した小規模なデータを送るような場合は、圧縮処理による電力消費は相対的に大きく、ウエーブレット変換のような本格的な圧縮手法は逆に消費電力増を招くとした。今回NECは、ごく簡単なデータ圧縮だけを行って、圧縮による消費電力増加を抑えた。

 同社によれば、上述した測定のサンプリングの工夫と、簡単なデータ圧縮手法の適用によって(図4の左端)、サンプリングの工夫なし(常時測定回路オン)でデータ圧縮なしの場合(同図の左から2番目)に比べて、消費電力が1/3に低減できるとする。なお、ウエーブレット変換を適用すると(同図の右端)、かなり消費電力が大きくなることも見せていた。

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