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ASUS社 董事長の施崇棠(Jonney Shih)氏
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 米Intel社の力を積極的に借りてスマートフォンやタブレット端末の市場をリードする――。台湾ASUSTek Computer(ASUS)社は、「2014 International CES」に合わせて開いた記者会見で、モバイル端末事業でIntel社の安価なマイクロプロセサの活用に傾倒する方針を鮮明に打ち出した。今回投入した多くのモバイル端末でIntel社の安価なSoC(system-on-chip)「Atom Z2560」と「Atom Z2580」を採用したのだ。

 ASUS社のモバイル端末では、これまで良好な関係を保ってきた台湾Mediatek社のSoCを採用した機種が姿を消した。モバイル端末向けSoCの巨人である米Qualcomm社のプロセサも「LTEに対応した上位機種などに限って使っていくつもり」と、発表会の会場でASUS社の説明員は明かした。

フラグシップ戦略に陰り

 ここにきて、モバイル端末市場におけるASUS社の立ち位置は微妙なものになりつつある。2012年、2013年とASUS社は、米Google社のAndroid搭載タブレット端末「Nexus 7」の設計と販売を請け負う栄誉を得た。Nexusシリーズは、Android端末のフラグシップモデルと位置付けられる。

 だが、「Nexus 7」が持つ「業界に与えるインパクト」という神通力は陰りつつある。Androidを搭載した安価なモバイル端末が大量に投入され、市場を席巻し始めているからだ。ASUS社は、スマートフォン市場で目立った結果を出せていない。このままではモバイル端末分野での存在感を失うかもしれないという危機意識が、ASUS社にIntel社の安価なプロセサによる賭けに出させたといえる。

ASUS社の新機種「Zenfone 4」の背面。Intelロゴがある。Zenfoneシリーズは樹脂筐体ながら「セラミック・コーティング」(説明員)を施したため、肌触りがとても良い。
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 Intel社がスマートフォンやタブレット端末用のSoCを、ASUSにいくらで販売しているのか。今のところ、ハッキリは分からない。しかし、安価であることは最終製品の価格の低さが物語っている。スマートフォンの価格は4型画面で99米ドル、6型画面で199米ドル。これは、安価なSoCで名を馳せるMediatek社のSoCを採用した機種並みである。故に、Intel社がASUS社にSoCを販売する単価はMediatek社製のSoC未満と考えるのが妥当だろう。

 Mediatek社のSoCはグルーバルな採用実績でQualcomm社を除く他社を圧倒する。加えて、無線LANやBluetooth、GPSといった機能を集積しており、こうした機能を実現するLSIを外付けする必要がないことがほとんどだ。

 実は、ASUS社が採用したIntel社のSoCは、集積するCPUコアが二つにとどまる。いわゆる「ディアルコア」SoCだ。ちなみに、CPUコアが四つのクアッドコア品で、無線LANやBluetooth、GPSなどの機能を集積したMediatek社の「MT6589T」の価格は15米ドル未満である。

 Intel社にとってASUS社は、以前からパソコン分野ではデスクトップパソコンやノートパソコンの最重要の開発パートナーである。ここにきて、スマートフォンやタブレット端末でも両社の蜜月ぶりが際立ちつつある。

 パソコン業界では、これまでのブランド企業が設計能力を失いつつある。ASUS社は日米欧より安価な人件費を背景に、それを維持している。Androidから「Windows」にOSを4秒で切り替えるタブレット端末とノートパソコンの兼用機「Transformer Book Duet TD300」のような製品を、ASUS社はどのパソコンメーカーよりも早く開発できる。これはIntel社にとって、リファレンス・デザインを成熟してもらえるという重大な利点がある。