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左から東北大学 教授 国際集積エレクトロニクス研究開発センター長の遠藤哲郎氏、東北大学 教授 省エネルギー・スピントロニクス集積化システムセンター長の大野英男氏、NEC グリーンプラットフォーム研究所長の中村祐一氏
左から東北大学 教授 国際集積エレクトロニクス研究開発センター長の遠藤哲郎氏、東北大学 教授 省エネルギー・スピントロニクス集積化システムセンター長の大野英男氏、NEC グリーンプラットフォーム研究所長の中村祐一氏
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試作した300mmウエハー
試作した300mmウエハー
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無線センサー端末向けマイコンの待機時電力を削減
無線センサー端末向けマイコンの待機時電力を削減
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マイコン全体を不揮発化
マイコン全体を不揮発化
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電源制御回路技術
電源制御回路技術
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不揮発性レジスタへの書き込み制御回路
不揮発性レジスタへの書き込み制御回路
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試作したチップ
試作したチップ
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消費電力を1/80へ
消費電力を1/80へ
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 NECと東北大学の共同研究グループは、消費電力を従来比1/80に低減できる無線センサー端末向けの不揮発性マイコンを開発した。技術の詳細について「International Solid-State Circuits Conference(ISSCC)2014」(2014年2月9~13日、米国サンフランシスコ)で発表する[講演番号:10.5]。講演タイトルは「A 90nm 20MHz Fully Nonvolatile Microcontroller for Standby-Power-Critical Applications」。

 近年、ビッグデータを収集するための無線センサー端末の重要性が高まっている。無線センサー端末では小型・軽量化が求められており、搭載できる電池容量が少ない。このため、回路の低消費電力化を進め、電池の交換頻度を減らす必要がある。通常、無線センサー端末は一定時間ごとに情報を検出・送信する間欠動作を繰り返しており、回路の動作率は低い。このため、回路を不揮発化し、待機時に電源を遮断することで消費電力を大幅に削減できる可能性がある。

 今回試作した16ビット不揮発性マイコンは、CPUコアやA-D変換器、乗算器といった各回路ブロックに、3端子型のMTJ素子で構成する不揮発性レジスタを導入することで、電源を遮断しても直前の状態を保持できるようにした。また、64Kバイトの混載メモリーにも同様のMTJ素子を利用し、マイコン全体を不揮発化している。

 大きく二つの回路技術を開発した。一つは、各回路ブロックのオン/オフを制御する電源制御回路である。電源の復帰に必要な時間を約120nsと短くできた点が大きな特徴とする。強誘電体メモリー(FeRAM)ベースの不揮発性マイコンでは、電源復帰に必要な時間は約400nsだった。また、揮発性のマイコンでは電源復帰にmsオーダーの時間がかかっていた。今回は不揮発性レジスタに高速・低電圧動作が可能なMTJ素子を利用することで、論理回路と不揮発性レジスタの電源を1Vに統一でき、電源制御が簡潔になった。これによって、電源の復帰時間を短縮できたという。

 もう一つの回路技術は、不揮発性レジスタへの書き込みを制御する回路である。この回路では、各回路ブロックが電源を遮断する直前の状態のみを不揮発性レジスタに書き込むように制御する。また、書き込み前後のデータが同一の場合には上書き処理をキャンセルすることで、不揮発性レジスタへの書き込み回数を最小限に抑える。こうした制御によって、不揮発性レジスタへの書き込みに必要な電力を抑制している。

 今回の不揮発性マイコンをクロック周波数20MHz、動作率0.1%の条件で動作させたところ、揮発性のマイコンに比べて消費電力を1/80に低減できた。これによって無線センサー端末の電池寿命を約10倍に延ばせるという。

 チップは90nm世代のCMOS技術と、3端子型のMTJプロセスを組み合わせて試作した。90nm世代のCMOSウエハーをルネサス エレクトロニクスで製造し、その後つくばイノベーションアリーナ(TIA)の300mm試作ラインでMTJ素子を作り込んだ。チップ面積は4.79mm角。チップの設計には一般的なEDAツールと、独自開発のツールを組み合わせて利用した。また、テストには通常のテスターを用いたが、今後実用化する際には不揮発性をチェックするためのテスト技術の開発が必要になるという。2017年前後の実用化を目指す。

 なお、今回の成果の一部は、内閣府の最先端研究開発支援(FIRST)プログラム「省エネルギー・スピントロニクス論理集積回路の研究開発」によって得られたもの。同FIRSTプログラムの実施期間は2010年3月~2014年3月の予定。