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 「ISSCC 2014」のセッション20「Wireless Systems」では、60GHz帯ミリ波無線や、Wi-Fi(無線LAN)の最新規格であるIEEE802.11ac対応のMIMO SoC、セルラー用受信機の外付けフィルタレス化技術などを中心に計8件が報告された。中でも60GHz帯ミリ波無線は、64QAM対応や、無線部とベースバンド部の1チップ化など、従来にも増して完成度が高まってきており、いよいよ実用化が近づいていることを感じさせる発表が相次いだ。

 最も注目を集めたのは、米Broadcom社が発表したIEEE802.11ad対応のチップセットである(講演番号20.2)。ノートPCなどのPCプラットフォームをターゲットとしており、アンテナとRFフロントエンドを集積化したアンテナモジュールを、同軸ケーブル1本でベースバンドチップと接続するアーキテクチャを採用した。16素子のビームフォーミングアンテナは、垂直/水平の偏波面切り替えが可能という。10mの通信距離で4.6Gビット/sの伝送レートを達成した。無線部の消費電力は送信時960mW、受信時1190mWである。ベースバンド部の消費電力については明らかにしなかった。

 東京工業大学は、送信/受信経路の周波数偏差を抑える回路方式を取り入れた60GHz帯トランシーバを発表した(講演番号20.3)。伝送レートは、1チャネル(2.16GHz帯域幅)使用時で10.56Gビット/s(64QAM)、4チャネルボンディングでは世界最速の28.16Gビット/s(16QAM)に達する。同研究グループとしては、ISSCC 2011とISSCC 2012に次いで3度目の記録更新となる。消費電力は送信時251mW、受信時220mWである。

 東芝は、無線部とベースバンド信号処理を1チップに集積化した60GHz帯近接無線用トランシーバを発表した(講演番号20.4)。同社は、ISSCC 2012において無線部とベースバンド部を別チップに集積化したチップセットを発表している。今回はAD/DA変換器、ベースバンド回路、基準信号の三つのクロック周波数を最適化することで変調信号帯域内のスプリアスの発生を抑え、60GHz帯近接無線において世界初の1チップ化を実現した。4cmの通信距離でMACスループット2.0Gビット/sを達成している。MAC処理までを含むトータルの消費電力は送信時581mW、受信時687mWである。

 60GHz帯のCMOSチップについては、日本からは本年の東芝と東工大の他、2013年はパナソニックがモバイル用途に特化した低消費電力のチップセット(無線チップとベースバンドチップ)を発表している。一方、2013年にWi-Fi AllianceがWiGig Allianceとの統合を完了し、Wi-Fi Allianceで相互接続性の認証プログラムの準備が進められていることから、無線LANで高いシェアを持つBroadcom社の参入で技術開発競争がし烈になると予想される。今後の各社の動向に注目したい。