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スクリーン印刷で17μmの配線

 (1)スクリーン印刷は,半導体層,絶縁膜,金属層,着色層,接着層などの印刷に使う技術である。スクリーン印刷の利点は,装置価格が1000万円程度と安いことにある。また,印刷に使用するインク材料に対する制約が少なく,材料使用効率が約80%と高い。さらに,大面積への成膜に向く注2)

注2)ただし,加工寸法が数十μmと比較的大きい,30μm厚以下に薄膜化しにくいという欠点がある。

 スクリーン印刷の量産レベルでの加工寸法の微細化が,この数年間で100μmから30μmまで進んできた。線幅30μmの加工は,PDP用の電磁波遮断フィルタ向けに量産化されている。これを17μmに微細化する技術をスクリーン印刷機大手のニューロング精密工業が開発した。フィルム基板の表面に加工を施したことによって実現した。線幅/線間隔(L/S)30μm未満のパターンをスクリーン印刷する場合,フィルム基板上におけるインクの濡れ広がりが問題になってくる。そこで,同社では,表面に多孔質層を形成したポリエチレン・テレフタレート(PET)フィルムに17μmの配線を印刷する技術を開発した。この多孔質層は,フィルム基板に印刷したインクを吸収し,塗布した個所の周囲に濡れ広がらないようにする役割を担う。

チャネル長1μmの有機トランジスタ

 (2)インクジェット塗布は,着色層,配線層,絶縁層,半導体層などの形成に使用する。インクジェットの利点は,版を使わずに平面上の必要な部分だけに自在に直描できる点にある。

 インクジェット塗布による描画寸法の微細化は,この数年間で数十μmから20μm程度まで進んできた。ただし通常のインクジェット・ヘッドによる量産レベルの描画寸法は直径約13μmが限界とされている。これ以下の微細化では,研究レベルではあるが,チャネル長1μmの有機トランジスタを形成した例が出てきた。

 チャネル長1μmの有機トランジスタは,東京大学 工学系研究科 量子相エレクトロニクス研究センター 准教授の染谷隆夫氏が,ドイツMax Planck Institute for Solid State Researchと共同で開発したものである。有機半導体層の上にソースやドレインのAg電極を形成したもので,電極の幅は2μm,厚さは25nmである。

 通常のインクジェット・ヘッドによる量産レベルの描画パターン寸法の微細化が直径13μm程度にとどまるのは,吐出できる液滴の量が最小で1plしか微量化できないためである。染谷氏のグループがこれ以下に微量化できたのは,従来のインクジェットと比べて1/1000以下となるサブf(フェムト)lの超微細液滴の吐出を可能にした技術を使ったためである注3)。1flの液滴が実現した場合,直径は1.3μmと1ケタ小さくなる。この吐出技術は産業技術総合研究所(産総研)ナノテクノロジー部門が開発した「スーパーインクジェット」技術である注4)

注3)インクジェット技術では,「液滴の量の制御でスーパーインクジェットを上回る方法は見通しが立っていない」(インクジェット技術を使った電子デバイスを開発する技術者)。このため,直径1μm以下の微細なパターニングを行う場合には,他の方法を検討することになる。微細化の限界の理由は,インクジェット技術の原理にある。液滴を小さくすると,体積に対する表面積の比が大きくなるため,溶媒が瞬間的に乾くようになる。液滴を1μm以下にすると,吐出させた瞬間に溶媒が乾燥してしまうためである。

注4)産総研では,flオーダーの微細液滴の吐出を可能にした技術の詳細について,公開していない。

 また,インクジェットで吐出できる材料の種類がこの数年間で増えてきた。ITO(indium tin oxide)やCu,Siなど,従来は難しかった材料がインク化できるようになり,金属配線や半導体の塗布が現実的になってきた注5)

注5)インクジェット塗布で使うインク材料が制約されてきた理由は,ヘッドを溶かさない溶剤を使い,吐出できる粘度に調整しやすく,飛んだ液滴がヘッドによって変性しない,などのさまざまな条件を満たす必要があるためである。

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