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システムLSI事業で成功するためには,国内メーカーは設計と製造を分離し,水平分業体制に移行しなければならない――。こう考えた経済産業省が主導して,国内メーカーの製造部門を統合した「共同ファブ」を立ち上げる構想があった。定評ある日本企業の製造力を集結し,世界で通用するSiファウンドリーを立ち上げる。一方で,製造に必要な大規模投資から解き放たれた各社は,設計力の強化に邁進できる。一挙両得を目指したこの構想は,結局うまくいかなかった。失敗の根底には,一体何があったのか。日経エレクトロニクスが2007年に掲載した連載記事で検証する。(2009/03/02)
【景気回復で共同ファブ構想が消滅】 景気後退期にLSIメーカーは危機感を募らせ,研究開発や製造に関する新たな枠組みを模索する。ところが,景気の回復とともに各社は独自戦略を採り始める。このことが,共同ファブ構想が消滅した一つの理由である。グラフは,WSTS(世界半導体市場統計)のデータから作成。
景気回復で共同ファブ構想が消滅
景気後退期にLSIメーカーは危機感を募らせ,研究開発や製造に関する新たな枠組みを模索する。ところが,景気の回復とともに各社は独自戦略を採り始める。このことが,共同ファブ構想が消滅した一つの理由である。グラフは,WSTS(世界半導体市場統計)のデータから作成。
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 世界に通用する先端SoC(system on a chip)向けの製造力を持っている企業はどこか――。こう聞かれたら多くの人は,台湾Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd.(TSMC)や,米IBM Corp.-シンガポールChartered Semiconductor Manufacturing Ltd.連合の名前を挙げるだろう。これらの大手Siファウンドリーには最先端のプロセス技術はもちろん,豊富なIP(intellectual property),一貫性のある設計環境,巨大な製造能力がそろっている。

 本来ならばここに,日本の独立系Siファウンドリーの名前が入るはずだった。実際,そのために日本政府は2001年度の第2次補正予算で315億円を投入し,NECの相模原事業場に90nm世代の300mm試作ラインを構築した。その運営会社として日本の大手LSIメーカー11社は「先端SoC基盤技術開発(Advanced Soc Platform Corp.:ASPLA)」を2002年に共同で設立した。

 ASPLAはその名の通り,先端SoC向けの設計・製造技術を整備する企業。その試作ラインで確立した技術を量産ラインにコピーすれば,TSMCやIBM社と戦えるSiファウンドリーができるはずだった。この日本版Siファウンドリー構想は,LSIメーカー各社の出資で工場(ファブ)を設立し,各社が共同で利用する予定だったため,当初は「共同ファブ」構想と呼ばれた。この構想は今のところ実現していない。おそらく,この先も難しいとの見方がほとんどである。