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機能の実現へ一歩一歩進む

 未来のテレビに向けた国内メーカーの取り組みは,第1段階の途上である。より軽快に動作し,動画再生にも対応する実行環境として,ソニーは「アプリキャスト」,パナソニックは「VIERA CAST」を実用化し,シャープは「新・Exシステム」を開発中だ。「1年間はトライアルという位置付けで,ユーザーの利用形態を把握したい」(パナソニック AVCネットワークス社 映像・ディスプレイデバイス事業グループ 商品企画グループ グループマネージャーの和田浩史氏)。

†アプリキャスト=ソニーが開発したテレビ向けウィジェット実行環境。アプリケーション・ソフトウエアはJavaScriptとXMLで記述する。ウィジェット経由で動画プレーヤーを呼び出すことも可能。

†VIERA CAST=パナソニックが開発したテレビ向けGUI実行環境。記述言語はJavaScriptで,メニュー画面などのGUIは同社が運営するサーバーが生成する。MPEG-2およびMPEG-4 AVC/H.264形式の映像を再生でき,H.264形式で配信されるYouTubeの映像を再生できる。

†新・Exシステム=シャープが2006年から採用するテレビ向け「Exシステム」を,動画再生に対応させた,開発中のGUI実行環境。記述言語にはSVGなどを用いる。MPEG-2およびMPEG-4 AVC/H.264形式の映像を再生できる。

 ソニーは日本で他社に先駆ける形で,2007年春より,放送番組の横にウィジェットを共存させるアプリキャストを提供している。2008年10月には,ウィジェットを個人が開発できる SDKを公開し,テレビ向けウィジェットの公募に踏み出した。

 これまで国内のテレビ・メーカーは,番組の映像を「汚される」のを嫌う放送局に配慮し,放送番組とウィジェットのような別の情報を同一の画面に表示する機能を避けてきた注2)。海外のテレビではUIの配置に特段の制限はないのとは対照的だ(図3)。

注2)具体的には二つある。一つは「放送コンテンツの上に異なる画像を重ねるのは,可能な限り避ける」。もう一つは「放送コンテンツに関連した情報を,コンテンツと同一の画面に表示しない」というものだ。こうした制約の根拠は,ARIB TR-B14/B15第二編9.3章/7.3章に規定されている「放送番組及びコンテンツの一意性の確保」,および著作者人格権の同一性保持権である。ただし,「サービスの提供主体が放送局以外である事実を明示すること」「視聴者の操作で表示/非表示を選択できること」を満たすことで,基本的にはいずれの制約も回避できる見込み。現在,テレビのUIに課せられている制約は,放送局とメーカーの紳士協定の意味合いが強い。

図3 海外向けテレビは自由なウィジェット配置を一足先に実現
図3 海外向けテレビは自由なウィジェット配置を一足先に実現
国内メーカーのテレビも,海外向け製品ではインターネットのコンテンツを表示するウィジェットを放送コンテンツに重ねたり,放送コンテンツを取り囲むといった,自由なレイアウトが許容されている(a),(b)。日本でも,ウィジェットと放送との連携に向け,徐々にウィジェットの「自由化」が進みそうだ。

 ソニーは,ウィジェットと放送コンテンツを画面の左右に分離する方式を採ったほか,アプリキャスト向けSDKの公開に当たり,ウィジェットの機能は放送コンテンツと関係しないものに限るとの制約を取り入れた。放送局の要望を取り入れながら,ユーザーが望むサービスの実現に向けて一歩一歩着実に進む同社の戦略がうかがえる。