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もう貧弱とは言わせない

図4 2009年,テレビのハード/ソフトはケータイ並みに進化
図4 2009年,テレビのハード/ソフトはケータイ並みに進化
2009年~2010年にかけて,テレビのハードウエア/ソフトウエア環境は大きく様変わりしそうだ。まずテレビ向けSoCの動作周波数が高まり,主記憶(DRAM)の容量も高まる。一般的なテレビでも,今の携帯電話機並みの能力が得られるとみられる。これに伴い,Adobe Flashへの対応や,他のパソコン/携帯電話向けウィジェット環境の移植が進みそうだ。2008年以降の実用化時期は本誌の予測。

 テレビのUIを縛るもう一つの壁であったハードウエアの能力不足も,2009年以降に大きく改善されそうだ。

 テレビ・メーカーは激しい価格競争にさらされる中で,ハードウエアのコスト削減を最優先してきた。このため,UIの改善やWebコンテンツのためにハードウエアの仕様を高めるという発想はあまりなかった注3)

注3) 例えば,テレビ向けHTMLブラウザー向けのメモリの割り当ては10M~20Mバイトほどにとどまる。「ここ2年ほどで,他のソフトウエアのコードを削りながら,ようやく使えるメモリが20%程度多くなった」(ACCESS IA・Solution開発本部 本部長の園田雅文氏)。アプリキャスト,VIERA CAST,Exシステムは,いずれも既存の空きリソースを活用し,ハードウエアを一切強化せずに実装されている。

 2009年以降,こうした状況に風穴が開く。テレビ向けSoC(system on a chip)の仕様は大幅に高まりそうだ。「典型的なテレビで,CPUコアの動作周波数は現在の倍近い400M~500MHzになる。自由に使えるメモリも,ほぼ倍となる見込み」(ソフトウエア開発企業)という。

 テレビのハードウエアの高性能化に伴い,アプリケーション/UI実行環境では,より機能の向上が期待できる。DTV仕様に次ぐ,業界標準の実行環境をめぐる争いが始まりそうだ。

 その争いの先端で意気込むのが,米Adobe Systems Inc.である。同社は,組み込み機器向けにFlash技術のライセンス料を無料とすることで,テレビに「Adobe Flash Lite」または「Adobe AIR」を実装するよう各メーカーに働き掛けている注4)。「テレビのUI向けにすぐにでも使いたい,との申し入れもある」(アドビシステムズ DMO テクニカルエバンジェリストの太田禎一氏)注5~6)

†Adobe AIR=Adobe社が提供するリッチ・インターネット・アプリケーション実行環境。記述言語はActionScriptかJavaScript。Flash技術を包含する。

注4) Flash技術のライセンスを無償提供する上で,Adobe社は機器メーカーに幾つかの条件を求める見込み。中でも重要なのが,Flashにかかわるファームウエアを更新可能にすることだ。「放送波で更新する方法を含めて,最適な更新法をテレビ・メーカーと協議している」(アドビシステムズ)。

注5)テレビにFlashを搭載する戦略は,テレビの世界展開を考えても理にかなう。BBCが提供する見逃し視聴サービス「iPlayer」や,NBC Universal社とNews社のジョイント・ベンチャーが展開する動画配信サービス「Hulu」,Amazon社の映像配信サービス「Amazon Video on Demand」は,いずれもストリーム配信を受ける端末側のソフトウエアにFlashを採用している。日本では第2日本テレビがFlashを採用した無料の映像配信サービスを展開する。

注6)このほか,他の実行環境を用いた配信サービスとして,米Microsoft社の「Silverlight」を用いるサービスには,米国では「Netflix」,日本では「Gyao」などがある。NHKの「NHKオンデマンド」はパソコン向けサービスにWindows Mediaを使用しており,将来はSilverlightに移行する可能性が高い。「サービスを立ち上げる段階でFlashも検討したが,DRMの仕様で我々の要望と折り合わなかった」(NHK NHKオンデマンド室 副部長の所洋一氏)。