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(前回から続く)

放送局と連携し,より放送を面白くするサービスを実現する「もっと楽しい未来のテレビ」はどうやれば実現できるか。テレビをお茶の間の「どこでもドア」にするためには,どんな機能やサービスとの連携が必要になるか。インターネット技術の動向に詳しいオピニオン・リーダー3人に意見を聞いた。

解は「ネット上の全チャンネル録画」

中島 聡氏

中島 聡氏
米UIEvolution, Inc., Founder

 未来のテレビの最終解は,ネットワーク上で仮想的に構築された「全チャンネル録画」だろう。ユーザーの視点に立てば,そこに答えがあるのは明らかだ。

 米国では,既に(IPTVやケーブルテレビなどで)見逃し視聴のサービスが普及している。米国における視聴体験のネックは,今や光ファイバの普及率だけだ。

 テレビのUIについて,入力を伴うようなサービスは思い切って携帯電話機に任せればいい。リモコンを片手に「やや上」を見ながら操作するのは,極めて面倒だ。リモコンを主体に,複雑な操作を要求するアプリケーションを作っても,誰も使わないだろう。携帯電話機であれば,例えば仕事の帰りにEPGで過去の番組リストを見て,そこに面白そうな番組,あるいは視聴者の間で盛り上がった番組があれば「帰宅後に見たいな」と思うだろう。

 ウィジェットは,私にとっては面白さを感じない。携帯電話機があれば十分だ。テレビの画面が真っ黒になるのはもったいないから,電源オフ時にウィジェットだけを表示させるのは有効かもしれない。

最初にメニュー画面を表示するテレビを

井上 大輔氏

井上 大輔氏
メタキャスト ファウンダー 取締役&Chief Visionary

 未来のテレビは,電源を入れて最初にメニュー画面が表示されるようになるだろう。ユーザーに関心あるトピックやお薦めの動画ブックマークを選ばせる。ログイン機能があれば,個人向けのお薦め機能も実現できる。

 既にWiiやプレイステーション 3といったゲーム機は,電源投入後にメニュー画面が出る。この仕様は,ゲーム機として革命的な変化だった。電源を入れてもすぐにゲームが始まらず,ユーザーに他の機能を選択させることができるからだ。

 テレビ放送の画面の横には,放送コンテンツ以外の「何か」を表示させる。テレビを見ながらネットで検索したり,テレビに対するツッコミを表示させたり,といった具合だ。動画に対して「特定のポイントでツッコミを入れる」という行為の面白さは,ニコニコ動画で実証済みだ。

 いずれ,「全チャンネル録画機」のようなパワフルなレコーダーが登場し,番組編成の意味がなくなる。放送局は,全チャンネル録画機を普及させるくらいなら,見逃し視聴サービスに早く取り組んだ方がいい。ネットの向こう側にコンテンツを置いた方が,トリックプレーの制限など,放送局の利益を損なわない見せ方ができる。

マイノリティーにも楽しみを

猪子 寿之氏

猪子 寿之氏
チームラボ 代表取締役社長

 テレビ放送は,マジョリティーに向けた「マス放送」で,お金をしっかり掛けてプロが制作したコンテンツ。これはこれで大事。だけど未来のテレビでは,これに加えてマイノリティーを対象にした楽しみがあっていい。

 例えば野球中継なら,観戦中に特定の選手を応援するコミュニティーにログインして,一緒に応援できるようにするとか。意中の選手がホームランを打ったときに,ニコニコ動画のように「キターー」というコメントで画面を埋め尽くせたら,一緒に応援してるみたいで楽しいじゃない?そんなサービスがあれば,絶対に野球中継はライブで見るよ。その方が放送局にとっても望ましいんじゃないかな。

 コメントを書き込むときには,Twitterの感覚で携帯電話機を使えばいい。携帯電話機に限らず,テキスト検索やコメント書きといった操作は,ユーザーの手元だけで完結させた方がいい。大画面を見ながら,リモコンで複雑な操作をするのは苦痛だ。小さな表示装置付きのリモコンであれば,手元で操作しても苦にならない。

†Twitter=個々のユーザーが「つぶやき」のような短文をWebサーバーに投稿し合うことで,互いに緩やかにコミュニケーションを取ることができるサービス。

 こうしたサービスは,必ずしも機器メーカー主体で行う必要はない。プラットフォームとしてアプリケーション実行環境を個人向けに開放してくれれば,すぐにこうしたサービスが立ち上がるだろう。サービスの主体と機器の主体がしっかり分離できていれば,機器メーカーが非難を浴びることはないはずだ。