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(前回から続く)

 ステレオ・カメラを使って車両や歩行者などまでの距離を認識し,ブレーキやアクセルを制御する技術で先行するのは富士重工業である。カメラだけで認識した距離は必ずしも信頼性が高くないため,同社以外の企業はブレーキなどの制御にまでなかなか踏み込めずにいる。同社は20年ほどかけて開発を進め,実用化にこぎ着けたという。既存のシステムで用いていたミリ波レーダを搭載しないため,販売価格を従来の約35万円から半額近い20万円以下にできるという。

 同社の次なる狙いの一つは測定できる距離を現状の2倍の200mに延ばすことである。将来欧州で販売する際に「200m先の障害物の情報が必要」(欧州系のある自動車部品メーカー)なためである。欧州ではドイツのアウトバーンなどで時速200kmで走行することがあり,日本と比べて遠くの物体まで検知することを求められる。

霧や雪でもカメラで距離測定

 車両と前方障害物の距離をカメラのみで測定する場合の課題は,雨や霧による視界不良の際の対応である。ミリ波レーダが距離の測定に向くのは,これらの悪影響を受けにくいためである。実際,富士重工業は,従来のシステムではステレオ・カメラとミリ波レーダを組み合わせていた(3ページ目の「カメラ以外も進化する,安価なレーダや360度検知のレーザ」を参照)。

 同社が実用化に踏み切るのは,視界不良の環境でも距離を測定できるメドを立てたからである。富士重工業のシステムは,霧や雪の環境でも0~100mの距離を測定できる注12)

注12)富士重工業は次世代ADAで特に「近距離での測定にこだわった」(富士重工業 スバル技術本部 車両研究実験第3部 主査の柴田英司氏)という。車両前方2m先では,数cmの誤差で前方障害物との距離を判別できる。遠距離では誤差は数mと大きくなるが「遠距離の情報を使っての車両制御はアクセルのオン/オフ制御くらいで,高い精度で距離を認識する必要性は低い」(同氏)とする。このシステムでは,対象物までの距離だけでなく,対象物が何であるかも認識してブレーキやアクセル開度などを制御する。対象物の大きさや形状,移動速度などから車両や歩行者,自転車らしさを推定している。例えば,大きさと形状が人に近く,移動速度が時速数kmであれば「歩行者らしい」と推定し,ブレーキの制御に早く介入する。

 距離を測定するには,二つのカメラによる画像から同じ物体を見つけ,その表示位置の差(視差)より計算する。重要なのは,二つのカメラで同じ物体を認識していることである。同じ物体を違う物体と認識する「ミスマッチ」は,ステレオ・カメラで距離を測定する際の最大の課題という。視界不良の環境では,特にミスマッチが発生しやすい。